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岡口裁判官に国会の訴追委が出頭要請、今後どうなる? 過去には裁判官9人が「訴追」
岡口裁判官(2018年10月24日撮影)

岡口裁判官に国会の訴追委が出頭要請、今後どうなる? 過去には裁判官9人が「訴追」

国会の裁判官訴追委員会は、2月13日の委員会で、東京高裁の岡口基一裁判官を呼び出して審理することを決めた。岡口氏本人が、3月4日に訴追委から呼び出しを受けたことを明かしている。岡口氏は今後どうなるのだろうか。

岡口氏は、犬の所有権をめぐる裁判の記事を紹介するツイッターの投稿により、裁判官に対する国民の信頼を損ねたとして、最高裁が昨年10月に戒告処分を下している。

岡口氏が自身のブログに掲載した内容によると、訴追委は今回、戒告処分の対象となった犬の所有権をめぐるツイッターへの投稿に加え、女子高生が殺害された事件をめぐる投稿についても調べる意向。

●訴追委は衆参両院の国会議員で構成

訴追委は、与野党の20人の衆参両院の国会議員で構成される(自民11人、公明2人、立憲民主3人、国民民主2人、維新・希望1人、共産1人)。刑事事件における「検察」のような役割を果たし、訴追理由の有無を調べる。訴追を決めると、同じく国会議員で構成する「弾劾裁判所」が事件を裁く。

一般的に訴追委の事情聴取は、委員が必要と判断した場合に行われる。「全く問題がないとみられるケースでは事情聴取には至らない」(訴追委員会事務局)という。事情聴取は、弾劾裁判法10条に基づき、出席した委員の過半数で決するため、岡口氏の事情聴取に出席委員の半数以上が同意したとみられる。

訴追委は、調査の結果、「訴追」「訴追猶予」「不訴追」と対応を決める(検察の起訴、起訴猶予、不起訴に似た基準)。ちなみに、訴追委は、裁判官弾劾法10条3項に基づき、非公開だ。

●「訴追」と決まった後に待ち構える「弾劾裁判所」

訴追委が「訴追」を決めると、裁判官の罷免などを決める「弾劾裁判所」で公開の裁判が開かれる。弾劾裁判所は、国会議員14人が裁判官をつとめる。訴追を受けた裁判官への判決は「罷免」「不罷免」の2種類だけ。つまり「クビ」になるかどうかしかない。

罷免が決定した場合、法曹資格そのものを失うため、裁判官の職を失うだけでなく、他に法曹資格が必要な検察官や弁護士になることもできなくなる。また、一審かつ終審のため、不服申し立てもできない。

罷免となる理由については、弾劾裁判法の2条にて以下のように規定されている。

(1) 職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠ったとき (2) 職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき

また、弾劾裁判所は、罷免した元裁判官の資格回復請求事件も担当する。罷免となった元裁判官は、罷免裁判の判決から5年以上経過して相当の理由がある場合や、罷免事由がないことについての明確で新たな証拠が見つかった場合などに請求ができる。

なお、裁判官と検察官を兼務できないのと同様に、訴追委の委員会と弾劾裁判所の裁判官は兼任できない(国会法127条)。

●訴追に至った裁判官は9人、罷免判決は7人

では、具体的にどの程度が、訴追、弾劾されているのか。訴追委のホームページによると、1948年から2018年までの訴追請求件数は計2万675件に対して、訴追に至った裁判官は9人。訴追請求は誰でも可能なため、「裁判の結果や手続きに不服ある人」などの申し立ても少なくないといわれている。

弾劾裁判所では、1948年以降、刑事事件で有罪になるなどした7人が、弾劾裁判所で罷免判決を受けている。平成に入ってから弾劾を受けた3人は、児童買春やストーカー行為、下着の盗撮で、いずれも性的なトラブルが関係していた。

資格回復については、7件が請求された。3件は請求棄却されたが、4件で資格回復を認めている。最も新しいのは2016年の事例で、ストーカー行為で罷免された元裁判官の資格回復請求について、罷免裁判から7年が経過している点や「深く反省し、法的素養と経験を活かしつつ弁護士として社会に貢献していきたいという確固たる意思を有するに至った」などとして、資格回復を認めた。

今回、岡口裁判官に対しては、最高裁が全員一致で戒告の結論を出している。最高裁の処分と訴追・弾劾の関係について、訴追委の事務局は「裁判所の処分と、訴追委員会の訴追の動きは、ともに独立しているもので、お互い影響を受けないし、規定もない」としており、弾劾裁判所事務局も同様の見解を示している。

(弁護士ドットコムニュース)

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