回転寿司「くら寿司」のアルバイト店員が、魚をゴミ箱に捨てた後、まな板に戻して調理しようとする動画がInstagramに投稿され、大きな話題になった。
くら寿司を運営するくらコーポレーションは2月8日、アルバイト店員2人を退職処分にしたことと、刑事・民事での法的措置の準備に入ったことを公表した。その理由として、信頼回復と全国で起きる同種の事件の再発防止を掲げている。
実際に、損害賠償を求められた場合、どんな展開が考えられるのか。
例えば、東京スポーツは2月8日の記事で、「こうした不適切投稿の場合、店や会社側と当事者との間である程度の金額を支払うことで和解になるケースがほとんど。金額はアルバイトの給料で簡単に支払えるレベルではないので、結局は親、きょうだいに多大な迷惑をかけることになる」と法曹関係者のコメントを紹介している。
最近、いわゆる「バカッター」「バイトテロ」と呼ばれるような行為が頻発しているが、くら寿司の件の場合、親の法的責任はどうなるのか。濵門俊也弁護士に聞いた。
●親の法的責任は刑事・民事ともにない
まずは、刑事の面からどうだろうか。
「今回のアルバイト店員については、刑事上、威力業務妨害罪(刑法234条)や名誉毀損罪(刑法230条1項)、器物損壊罪(刑法261条)等に問われ得ると思います。
ただ、その親御さんは、不適切投稿を共謀したわけでも教唆したわけでもありませんし、幇助もしていませんので、共犯となることはありません。すなわち、親は刑事責任を負いません」
民事の損害賠償についてはどうか。
「民事の損害賠償責任についても、成年者であっても未成年者であっても、親は法的責任を負いません。なぜかというと、アルバイト店員ができる年齢であれば、自己の責任を弁識するに足りる責任能力(民法712条)が認められるのが原則だからです。
つまり、労働基準法56条1項によれば、15歳の誕生日を迎えてから最初の3月31日が終了するまでは、児童を働かせてはならないことが規定されています。
また、働ける時間帯についても、午後10時から午前5時までの深夜時間帯について、18歳未満は深夜のアルバイトができない旨規定されています(労働基準法61条1項)。学校の校則や自治体の条例によって禁止されていることもあるでしょう。
いずれにしてもアルバイトができるということは、たとえ未成年者であっても責任能力が認められますので、親が民事の損害賠償責任を負うことはないのです」
結局、親の法的責任はないということか。
「そうですね。法的責任はないということになります。しかし、道義的な責任として、親が負担することは想定されますので、『結局は親、きょうだいに多大な迷惑をかけることになる』というわけです。
『バカッター』の心理状態は知る由もありませんが、刑事についても民事についても、大人を怒らせたらとんでもない目にあうことを肝に銘じておくべきです」