「エアギター在庫アリ」。こんな貼り紙をした京都のカレー店「カレー工房ギャー」が朝日新聞に掲載され、話題になった。
朝日新聞などによると、2016年に開業したこの店の店長はエアギターの達人。エアギター本体は1000円、ピック、ストラップ、スタンド、ケースなどは全て100円で、客が支払った品代は被災地支援の募金になるという。演奏は3000円で、欧米のメタルバンドの曲に乗せて、1分間弾いてくれるそうだ。
編集部が店に問い合わせたところ、仕組みとしては、例えばエアギター本体は1000円で、購入証明書と店内で使えるカレーチケット1200円分(100円割引×12回)がもらえ、購入額1,000円分は全額が寄付にまわるそうだ。
エアギターを通じた寄付はとてもユニークだが、エアギターの購入や演奏に消費税はかからないのだろうか。冨田建税理士に聞いた。
●エアギターの提供それ自体は「役務の提供」と判断されれば、消費税の課税対象になる
まず、店長や顧客の寄付する志が尊いですね。そこに敬意を払いたいと思います。
今回の本題である税金の話に入っていきましょう。消費税法では国内取引の場合、非課税取引を除き、事業として行った資産の譲渡や貸付け、役務の提供につき納税義務を課しています。
例えば税理士等の士業やミュージシャン等のように物理的な資産の提供がなくてもサービスを顧客に専門家として有償で提供すれば役務の提供として事業と扱われます。
ですので、寄付は考慮外としたエアギターの提供自体は
(1)1,000円等のメニューがあるため事業と判断でき
(2)限定列挙される非課税取引には該当しない
ため、消費税の観点からは原則として課税事業に該当と言えそうです。
●判断は難しいところ
寄付自体は消費税の不課税取引に該当します。この場合は、エアーで実際は存在しない物を渡す等をしこれを全額寄付に充当しているため、顧客の払う寄付金を預かり復興事業に代理で支払っただけで、事業に該当せず消費税の納税義務がないとの解釈が考えられます。
こう書くと色々な意見がありそうですし、個人的には杓子定規すぎてなんかなぁとも思いますが、「エアギター等の売上も事業としてこれに対応する消費税も納税し、消費税分を除いた額を寄付」する形が「税法理論的には」安全とも考えられなくはないです。
ただ、税法には納税者有利の原則があるので、寄付金の預かりとして消費税不要との主張が通る余地があると個人的には思っており、最終的には税務署の見解によりますが、そのように判断してほしいと期待したい面はありますね。
なお、事業の課税期間の基準期間の売上が1,000万円以下の場合は消費税は免税です。仮に店長が2016年に開業した個人事業者とすれば前々年が基準期間のため、2018年以降は前述の見解の確認・調整を含めて消費税課税の判定が必要になりそうですが、1,000万円以下の場合は消費税を気にせず全額寄付できるでしょう。
私自身も東日本大震災の年の夏に石巻で専門士業として相談イベントに参加したり、東京都の復興まちづくりシンポジウムで公認会計士協会東京会の委員として発表をした事もありますが、このような話を聞くと税理士は勿論、幅広い人々が復興に寄与されるとよいと思いますし、私も専門知識の提供等のできる事をして行きたいと思いますね。
【取材協力税理士】
冨田 建(とみた・けん)税理士・不動産鑑定士・公認会計士
42都道府県で不動産鑑定業務の経験があり著書「弁護士・公認会計士・税理士のための不動産の法令・評価の実務Q&A」や雑誌・税理士会会報等に数回執筆。公認会計士協会東京会第四回音楽祭で自作曲「ふどうさんのうた」で優勝。
事務所名 : 冨田建 不動産鑑定士・公認会計士・税理士事務所
事務所URL:http://tomitacparea.co.jp/