娘の夫が、突然娘と離婚したいと言いだして二世帯住宅から出て行ったが、ローンの支払いが残っているので困っている。身勝手な娘の夫に、契約通りにローンの支払いをさせることはできるのかーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにこのような相談が寄せられた。
相談者は、6年前に娘の夫と共同で二世帯住宅を建てた。権利は、娘の夫4:相談者6の割合で、娘の夫はまだ2200万円のローンが残っている。そもそも、娘の夫が二世帯住宅を望んでいたのに、離婚を理由にローンの支払いを免れようとしていることに納得がいかないようだ。
そもそもローンは娘の夫が銀行と契約したものだ。離婚したとしても、娘の夫はローンを返済し続けることになるのか。鳥生尚美弁護士に聞いた。
●離婚でも支払いは免れられない
「住宅ローンは、金融機関と債務者(本件では、夫)との間での契約ですので、債務者は、別居や離婚に関わらず、金融機関の了承なく支払いを免れることはできません」
では、もし夫がローン返済を勝手にやめてしまった場合、その住宅はどうなるのか。
「夫が契約に従った支払いをしなかった場合、自宅土地建物には通常、住宅ローンを担保するための抵当権が設定されていますから、金融機関はこれを実行して競売によって債権を回収しようとするでしょう」
つまり、相談者はその家に住み続けることができなくなるリスクがあるのだ。
●「返済を強制することはできない」
何とかして、夫に支払いをさせる方法はないだろうか。
「離婚条件として、夫が金融機関への住宅ローンの返済を続けることを合意することもできます。しかし万が一、夫が返済をしなくなった場合に、夫に金融機関への返済を強制することはできません。
特に、きちんと話合いをしないで勝手に出て行ったという本件の事情からすると、夫は家族に対する責任をすでに放棄しており、家に対する愛着もないことが想像されます。住宅ローンの返済義務も放棄してしまう可能性が高いと言わざるを得ないでしょう」
●「契約者の変更」「借り換え」を検討するべき
現実的には、どう対応することができるのか。
「可能であれば、金融機関と相談をして、夫から妻もしくは相談者へ契約者を変更するか、別の金融機関で借り換えをすることをお勧めします。
そして、夫名義の4割の共有持分については、財産分与として妻名義に変更するか、相談者との間での売買をして相談者に譲渡を受けるかのいずれかの対応をすると良いでしょう。
いずれにせよ、これらの手続をするためには、夫との話し合いが必要です」