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女性教諭が匿名で「職場の不満」投稿したのが発覚…つぶやきから「身バレ」するリスク
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女性教諭が匿名で「職場の不満」投稿したのが発覚…つぶやきから「身バレ」するリスク

横浜市の市立中学校の20代女性教諭が、新年度のクラス替えについての不満などをツイッターに投稿していたとして、市教育委員会は5月9日付で、この女性教諭をクラス担任から外した。

市教委によると、女性教諭は今年3月ごろ、新年度のクラス替えについて「思うようなメンバーにならず、悔しかった」などとツイッターに投稿していた。また、卒業行事に向けた同僚教諭のダンス練習を批判する投稿もしていた。匿名のアカウントで、学校名や生徒や教諭の個人名はなかったが、一部に同僚の名前が書かれていたという。

すでに投稿は削除されており、市教委の担当者は「事実を確認したうえで、適切に対応する」とコメントした。今回のように、職場の不満をSNS上に投稿する人は少なくないかもしれない。法的問題はないのだろうか。気をつけるべきポイントについて、深澤諭史弁護士に聞いた。

●匿名でも「名誉毀損」が成立する場合がある

「今回のケースは、基本的に、犯罪にはならないと思います。同僚の名前は書かれていたようですが、中傷に及んだような事実はないと考えられ、名誉毀損罪の可能性はほとんどないでしょう。また、学校の業務に支障が出たとまではいえませんので、業務妨害罪などに問うことも難しいと思います」

匿名のアカウントで、学校名や生徒や教諭の個人名はなかったとのことだが、こういう場合でも、問題になりえるのだろうか。

「実名を摘示しなくても、読者が対象者を推測できて、『被害者の社会的評価を低下させる』と評価されれば、名誉毀損罪が成立しえます。

また、法的な問題を差し置いても、推測されてしまった以上は、関係者に何らかのかたちでつながり、今回のように問題になったり、あるいは事件になってしまうことは珍しいことではありません。私もそういう事件の相談や依頼を受けることはよくあります」

●断片的な情報の組み合わせで個人特定されうる

今回の事件のように『職場の不満』をつぶやく際の注意点は何かあるのだろうか。

「基本的には、つぶやかないに越したことはないのですが(笑)。つぶやくとすれば、自分や関係者が特定されないように細心の注意を払うことです。たとえ自分や勤務先を『匿名』でつぶやく場合でもです。

モザイクアプローチと呼ばれていますが、断片的な情報を組み合わせて、個人を特定することは、ネット上でよくおこなわれています。

たとえば、自分が男女どちらであるかをつぶやけば、約半分の人数まで絞り込めます。さらに、天気、職種、大まかな地方、使っている交通機関、その日にあった『イベント』など、組み合わせていけば、特定人までたどり着くことは、決して不可能ではありません。

そういったつぶやきをするたびに、(1)どんどん『つぶやきから推測される自分の範囲』が狭まっていくこと、(2)最後には『1人に絞り込まれる』ということ、(3)その時の推測の材料は、今からする『1つのつぶやき』だけではなくて、これまでにした『すべてのつぶやき』であること――は自覚するべきでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

深澤 諭史
深澤 諭史(ふかざわ さとし)弁護士 服部啓法律事務所
明治大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了。IT関連事件、ネット上の表現トラブル、刑事弁護、弁護士法令問題などを中心に取り扱う。主な著書に「弁護士の護身術」「まんが 弁護士が教えるウソを見抜く方法」「その「つぶやき」は犯罪です」、「弁護士のための非弁対策Q&A」「Q&A弁護士業務広告の落とし穴」「インターネット権利侵害Q&A」。

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