電話会社「回線を切ってください」。上司「わかりました」。「ブチッ(???)」――電話会社の担当者から言われた「回線を切る」という言葉を真に受けて、会社の上司が電話線を電気工事用ナイフで切ったという投稿が、ツイッターで「ネタ」として人気を集めている。7月上旬までにリツイートは約2500件以上、お気に入り登録も約1000件にのぼった。
今回のケースは、何かの工事か点検のためにNTTの担当者が会社にやってきたとき、「回線を一時的に切ってもらえます?」と依頼したところ、機械に詳しくない上司が「物理的に切る」という意味だと勘違いしたようなのだ。ツイッターには、この上司が「ガムテープで修理」したというケーブルの写真も投稿され、さらに話題を広めた。
このような「言葉の誤解」によるトラブルが生じたとき、責任はどちらにあるのだろうか。電話線をナイフで切ってしまった「上司」氏は、電話会社の担当者の言い方が悪かったとして、修理代を請求できるだろうか。森本明宏弁護士に聞いた。
●損害賠償はあり得るが、今回のケースでは無理
「専門業者の言葉を消費者が勘違いする可能性は、十分にあります。一般的に、専門業者と消費者との間には、専門知識や情報の格差が存在するからです。
場合によっては、説明義務違反により、業者が損害賠償しなければならない可能性も出てきます」
――どんな場合に業者側に「責任」が生じるのか。
「このような『言葉の誤解』でトラブルが起きた際、指示した人が損害賠償責任を負うかどうか、判断するポイントは次の2点です。
(1)その言葉が相手の誤解を招く可能性があるかどうか
(2)相手が誤解したうえで実際に行動し、損害が発生することを予見できるかどうか
つまり、専門業者は誤解が生じそうな場面では、相手が言葉の意味を取り違えないように、きちんと説明すべきだということになります」
――では、今回も損害賠償が認められる?
「いえ、今回の事案では電話会社に修理代を請求することはできないでしょう。
なぜなら、『回線を切る』という言葉が、物理的に電話回線ケーブルを切断することを意味するものではないことは、広く一般的に受け入れられていると言えるからです。
『回線を切って』という言葉が、物理的な切断を指示されたとの誤解を招く可能性は低く、実際に相手が物理的に切断してしまうことまでは予見できません」
つまり、「回線を切る」は一般的に受け入れられている言葉で、誤解を招く専門用語ではないという判断だ。確かに「PC落として」や「モニタ切って」で、いちいちモノを破壊されたらたまったものではないだろう。