弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. インターネット
  3. 突然開催延期の「グルメンピック」、企画会社が破産…出店料を取り戻せるのか?
突然開催延期の「グルメンピック」、企画会社が破産…出店料を取り戻せるのか?
グルメンピックの公式ページ

突然開催延期の「グルメンピック」、企画会社が破産…出店料を取り戻せるのか?

2月に予定されていた食イベント「グルメンピック」の開催を突如延期した「大東物産」が2月20日、東京地裁から破産開始決定を受けた。注目されるのは、参加予定店から集めていた出店料の行方だ。東京商工リサーチによると、同社の負債総額は、1億2340万円。債権者510人のうち、508人がグルメンピックの出店予定者だという。

同社は、味の素スタジアムで合計10日間の「日本最大級の食フェス」を開催するとして、昨夏ごろから参加店舗を募集。しかし、開催を翌月に控えた今年1月17日、「請負会社の急なキャンセル」が発生したとして、突然延期を宣言した。

困惑したのは、出店を予定していた参加者たちだ。延期が発表されると、20万〜80万円の出店料の返金を求め、大東物産とトラブルに。同社は「2月末日」に出店料を返金すると発表していた。弁護士ドットコムニュースは、同社への連絡を試みたが、電話はすでに使われておらず、メールへの返事もなかった。

破産手続きが始まった大東物産だが、応募した店舗が出店料を取り戻すことはできるのだろうか。また、刑事責任を負う可能性はないのか。秋山直人弁護士に聞いた。

●破産後の手続きはどのように進行するのか?

「既に裁判所より破産手続開始決定がなされており、破産管財人の弁護士が選任されていますので、破産した大東物産に対する債権については、出店料の返還請求権を含めて、今後は破産法に基づく破産手続に従って処理されることになります」

秋山弁護士はこのように述べる。具体的には、どのような手続きになるのか。

「具体的には、出店予定者の方々は、所定の期限までに債権者として破産債権届を提出することになります。

破産管財人は、破産した大東物産の破産に至る経緯や財産状況を調査し、換金できるものがあれば換金して、配当財源を集めます。

一定程度以上の配当財源が集まり、破産管財人報酬、滞納税金などの優先する債権(財団債権)を弁済しても余剰があれば、破産管財人が債権の調査をした上で、一般の破産債権者に平等に配当することになります。

ただ、破産するケースでは、破産した時点では資産が余り無いケースが多く、今回についても、配当が実施されるかどうかは何とも言えませんし、実施されたとしても、出店予定者の方々が前払いした出店料のごく一部の配当にとどまることが予想されます」

出店者が個別に裁判を起こして、出店料の返還を請求することなどはできないのか。

「債務者が破産手続に入ると、債権者が個別に民事で訴訟を起こしたり強制執行したりすることはできず、破産手続に委ねるしかありません」

他にポイントとなる点はあるのか。

「後は、大東物産の代表取締役個人も破産するのかどうかは気になるところです。

出店料の返還債務について、代表取締役個人は当然には債務者になりませんが、会社法429条の規定により、会社の取締役がその職務を行うについて『悪意又は重大な過失』があったときは、取締役個人も被害を被った第三者に対し、その損害を賠償する責任を負うとされています。

本件では、出店予定者から出店料を集めておきながら『グルメンピック』の企画を実現できなかったことについて、代表取締役個人に職務上の『悪意又は重大な過失』が認められれば、代表取締役個人も出店予定者に対して損害賠償債務を負う可能性があります。

もっとも、代表取締役個人も破産したところで、個人資産はほとんどないということも考えられますが」

●刑事責任を負う可能性は?

「後は、刑事面で代表取締役個人に詐欺罪等の刑事責任を問えないかということが問題になり、これは破産とは別の話です。

詐欺罪が成立するためには、出店予定者から出店料を集める時点で、『グルメンピック』の企画を実現する意思も能力もないのに,それらがあるかのように装って出展予定者を騙したといえることが必要と思われます。

具体的事情は明らかではありませんが、そのような事実関係がもしあるのであれば、警察が詐欺罪で捜査・立件するという可能性もあるでしょう。

その関係では、大東物産に会社としての営業実態があったのか否か、『グルメンピック』の開催の準備や宣伝はどの程度具体的に進んでいたのかどうかといった事実関係が重要になってくると思います。

なお、『2月末までに返金する』と出展予定者に言っておきながら破産したことについては、詐欺罪だとすることは難しいでしょう。仮に、2月末までに返金する見込みがないのにそう言っていたとしても、そのことによって新たにお金をだまし取ったわけではないからです」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

秋山 直人
秋山 直人(あきやま なおと)弁護士 秋山法律事務所
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は四谷にあり、不動産関連トラブルを中心に業務を行っている。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では正社員スタッフ・協力ライター・動画編集スタッフと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

正社員スタッフ・協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする