大ヒットとなっている新海誠監督のアニメーション映画「君の名は。」の作中に出てくる「口噛み酒」というお酒がネットで話題を呼んでいる。
話題のシーンは、主人公の女の子(三葉)が、実家の神社の巫女として、「口噛み酒」という伝統的な酒造りを人前で披露しているところだ。「口噛み酒」について、「君の名は。」の劇中では、三葉の友人が、「米を噛んで、唾液と混ざった状態で放置しておくだけで、発酵してアルコールになるという日本最古のお酒」と説明している。
このシーンがネットで注目され、 「三葉ちゃんの口噛み酒」としてツイッターなどSNSを中心に話題となっている。影響を受けたネットユーザーの中には、実際に自分で「口噛み酒」を作っている過程を撮影して「口噛み酒を作ってみた」という動画まで公開している人もいる。
映画では、三葉の妹が、「巫女の口噛み酒」の商品化を提案し、「きっと売れるわ!」と三葉に提案するシーンがある。もし、個人で「口噛み酒」を作って、販売することは法的に問題ないのか。西口竜司弁護士に聞いた。
●アルコール度数が1%以上の飲料を製造すると「酒税法」の規制を受ける
「アルコール度数が1度(%)以上の飲料とすることができるものは、酒税法上の『酒類』にあたります。
そして、この『酒類』を製造するためには、製造する場所を管轄する税務署長から、酒類の製造免許を受ける必要があります。許可を受けずに酒類を製造すると、酒税法違反になります。
酒税法54条1項によれば、『酒類、酒母又はもろみを製造した者は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する』と規定されています。
今回話題となっている『口噛み酒』も、もし1%以上のアルコール分を含んでいるものを製造した場合は、刑罰を科せられる可能性があるでしょう」
西口弁護士はこのように述べる。1%未満のものであれば、製造しても酒税法上は問題ないということのようだ。また、自宅で梅酒を作って楽しむ人もいるが、酒類を製造したことにはならないのか。
「その場合は例外が定められています。
たしかに、焼酎などに梅をつけて自家製梅酒をつくることは、酒類と他の物品を『混和』して、新たに酒類を『製造』したものとみなされます。
ただし、消費者が個人的に楽しむためにつくることは、例外として『製造』にあたらないとされているのです(酒税法7条、43条11項)。
一方で、お米を発酵させてアルコールを製造する『口噛み酒』の場合、こうした例外にはあたりません」
個人で楽しむ分には、個人の自由とも思えるが、なぜこうした規制が存在するのか。
「何となく、衛生上の観点から定められているようにも読めますが、酒税を確実に徴収する趣旨で定められた法律です。一般人がそれぞれ自由に酒類を製造してしまうと、税金を適切に徴収できないというわけです。
近年規制緩和の動きがあるところですが、アルコールを製造することについては政府の方針は変わっていません。個人的にはそんなに大きな問題でもないような気もするのですが、法律がある以上、現状ではこうしたルールになっています」