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企業が注目する「ビッグデータ」活用法「個人情報保護」は大丈夫か?
「ビッグデータ」の活用に注目が集まっている

企業が注目する「ビッグデータ」活用法「個人情報保護」は大丈夫か?

インターネット上に蓄積された膨大な情報「ビッグデータ」の活用に注目が集まっている。

それ自体は単なる情報の集まりに過ぎないのだが、うまく分析し、活用できれば「宝の山」になると言われている。

このビッグデータを積極的に利用している人物の1人が、ソフトバンクの孫正義社長だ。孫社長は4月9日に東京都内で行った講演で、自社のバナー広告を打つ際に、検索大手ヤフーのユーザーの性別や年代、携帯電話の通信会社などを参照し、ソフトバンクに乗り換えそうなユーザーに絞って表示させていると話したという。

消費者の趣味・嗜好や消費傾向に合わせた形で、効果的にマーケティングをする。ビッグデータの利用は、そんな形でも進みつつあるのだ。

だが、その一方で、ビッグデータにはユーザーの性別・年齢や商品購入履歴などの「個人情報」も含まれており、その活用には注意が必要だとも言われている。企業はどんな点に気をつけてデータを扱うべきなのか。内田公志弁護士に聞いた。

●個人情報保護法以外にも、プライバシー、著作権、営業秘密などを侵害しないよう配慮が必要

内田弁護士はまず前提として、「個人情報を含むデータの利用は、個人情報保護法の制約を受けます」と指摘する。

個人情報保護法の定義では、個人情報とは「個人を識別できる情報」(2条1項)だ。同法は個人情報を取り扱う事業者に対して、利用目的をできる限り特定すること(15条)、その目的の範囲内で使うこと(16条)を義務づけている。

さらに同法は、嘘をつくなど不正な方法で個人情報を入手しないこと(17条)や、利用目的を本人に通知・公表すること(18条)や、(漏えいなどがないように)安全かつ適正な管理をすること(20条)を義務づけ、同意を得ないで、個人データを第3者に提供すること(23条)などを禁止している。

では、「ビッグデータ」は全てこのような制約を受けるのだろうか。内田弁護士によると、たとえば「40歳独身男性の購買傾向」のように、ビッグデータを加工・分析して、特定の個人を特定できない情報に抽象化すれば、個人情報には該当しなくなるという。

だが気をつけるべきなのは、個人情報保護法だけではない。内田弁護士は「情報がデータベース化され創作性がある場合には、データベース自体が著作権保護の対象になります。また、その情報が『営業秘密』であれば、不正競争防止法上の保護の対象。さらに、プライバシーに関する情報であれば、プライバシー権の保護を受けます」と、利用に際しての様々な注意点を挙げていた。

幅広い利用可能性を持つビッグデータだが、各方面への配慮を怠ると、手痛いしっぺ返しを食らうこともありそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

内田 公志
内田 公志(うちだ ひろし)弁護士 弁護士法人内田・鮫島法律事務所
京都大法学部卒。1986年、弁護士登録。外国企業との合弁契約、ライセンス契約等の英文契約の作成のほか、会社法関連、特許関連訴訟及び瑕疵担保・製造物責任関連の技術訴訟などが専門。

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