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東京藝大「大吉原展」がSNS炎上「人身売買の歴史をエンタメ化」中止求める声も…主催者「負の歴史ふまえ展示」
「大吉原展」公式サイト(https://daiyoshiwara2024.jp/)より

東京藝大「大吉原展」がSNS炎上「人身売買の歴史をエンタメ化」中止求める声も…主催者「負の歴史ふまえ展示」

東京・上野にある東京藝術大学大学美術館で、江戸にあった遊郭「吉原」の文化や芸術を紹介する展覧会「大吉原展 江戸アメイヂング」(主催:東京藝大・東京新聞・テレビ朝日)が3月に開幕する。

ところが、大吉原展の公式サイトが2月1日に更新されて「エンタメ大好き」「イケてる人は吉原にいた」といったコピーや展示内容が明らかになってくると、SNSでは批判の声が上がりはじめた。

その多くは「女性の人身売買や性暴力がおこなわれていた歴史に触れられていない」「エンタメや遊園地のように扱って吉原を美化している」というもの。

脳科学者の茂木健一郎さんまでSNS上で「企画の大幅変更か『中止』が不可避だと思います」と投稿するなど、波紋が広がっている。

⚫️「美術館が吉原になる!」

プレスリリースでは、この企画展の開催趣旨を次のように説明している。

「約250年もの長きに渡り続いた幕府公認の遊廓・江戸の吉原は、他の遊廓とは一線を画す、公界としての格式と伝統を備えた場所でした。武士であっても刀を預けるしきたりを持ち、洗練された教養や鍛え抜かれた芸事で客をもてなし、夜桜や俄など季節ごとに町をあげて催事を行いました」

「江戸吉原は、常に文化発信の中心地でもあったのです。3月にだけ桜を植えるなど、贅沢に非日常が演出され仕掛けられた虚構の世界だったからこそ、多くの江戸庶民に親しまれ、地方から江戸に来た人たちが吉原見物に訪れました」

「本展では、今や失われた吉原遊廓における江戸の文化と芸術について、ワズワース・アテネウム美術館や大英博物館からの里帰り作品を含む国内外の名品の数々で、歴史的に検証し、その全貌に迫ります」

また、ポップなピンク色を基調とする公式サイトでは、「美術館が吉原になる!」「お江戸吉原はイベント三昧」「ファッションの最先端 吉原は江戸カルチャーの発信地!!」といったキャッチーなコピーが躍っている。

1万8000円の「VIPチケット」を購入すると、3月25日に開かれるイベント「お大尽ナイト」に参加して「花魁道中」を観覧できるという。

⚫️「国立大学の付属美術館で…」

これに対して、SNSでは「女性たちが何をさせられていたか、ぼやかされている」「吉原は女性が人身売買されていた場で、ポップに扱うのはどうなのか」「国立大学の付属美術館という社会的に信頼性のある施設が女性の人権の歴史に対し虚偽を拡散するなら明らかに社会的害悪になる」など、批判が殺到している。

脳科学者の茂木さんも、自身の公式YouTubeで、この企画展を次のように批判した。

「押し出し方があまりに時代から外れている。こんなの出してきていいの、という驚きがあります。途方にくれる。関わっている組織やメディアは複数にわたるが、リリースされたものをみて誰もこれまずいんじゃないのと言わなかったのがびっくり。日本の最大のリスクの一つだと思う」

⚫️主催者側「人権侵害・女性虐待、許されない制度」

「大吉原展」の広報担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、次のように回答した。

「本展の開催について、さまざまなご意見をいただいていることから、展覧会の主催者よりご説明申し上げます。本展のテーマである『吉原』という場所は、江戸時代に幕府公認のもとで作られました。

この空間はそもそも芸能の空間でしたが、売買春が行われていたことは事実です。同時に、徹底した非日常の空間演出をはじめ、廓言葉の創造、書や和歌俳諧、着物や諸道具の工芸、書籍の出版、日本舞踊、音曲、生け花や茶の湯など、文化の集積地でもありました。

その結果、多くの文化人が集い、膨大な絵画や浮世絵、書籍などを生み出す場となりました。本展は、今まで『日本文化』として位置づけられてこなかった『吉原』が生み出した文化を、美術作品を通じて再検証し、江戸文化の記憶として改めて紹介する趣旨で開催を決定いたしました。

しかしながら一方で、上述しましたように、本展がテーマとする、花魁を中心とした遊廓『吉原』は、前借金の返済にしばられ、自由意志でやめることのできない遊女たちが支えたものであり、これは人権侵害・女性虐待にほかならず、許されない制度です。本展では、決して繰り返してはならない女性差別の負の歴史をふまえて展示してまいります」

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