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海賊版サイト運営の「旨みなくなる」 漫画村に広告料はらった「代理店」に賠償命じた判決の意味
赤松健さんと平野敬弁護士(2021年12月24日/司法記者クラブ/弁護士ドットコム撮影)

海賊版サイト運営の「旨みなくなる」 漫画村に広告料はらった「代理店」に賠償命じた判決の意味

海賊版サイトから漫画を守る「画期的」な裁判例が生まれた。

海賊版サイト「漫画村」に広告掲載料を払ったのは、著作権法違反の「ほう助」にあたるとして、漫画家の赤松健さんが、東京都の広告代理店とその子会社を相手取り、損害賠償をもとめた裁判で、東京地裁は12月21日、原告の請求を認めて、満額にあたる計1100万円の支払いを命じた。

赤松さんは12月24日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開き「(漫画村のような)ストリーミング型の海賊版サイトに対して打つ手が欠いていたが、今回、広告からダメージを与えることができるということがわかり、すごく画期的な判決だと思っている」と喜びを口にした。

●赤松さんの漫画も「漫画村」に無断掲載されていた

判決などによると、漫画村は2016年1月ごろ、新作を含めて5万冊以上の漫画をインターネット上で「無料」で閲覧することができるサイトとして開設された。だが、その多くは、著作権者の許諾を得ずに違法に掲載されたものだった。

赤松さんの漫画も例外ではなく、『魔法先生ネギま!』『UQ HOLDER!』といった人気作品が2017年6月から11月にかけて、無断掲載された。

その後、漫画村をはじめとした海賊版サイトが、広告費の収入を資金源として運営されていることが社会的問題となっているとして、広告関係団体が2017年から、違法・不当サイトを広告掲載先から排除する取り組みをはじめた。

また、政府は2018年4月、特に悪質なサイトとして「漫画村」などを挙げて、法整備までの緊急的な措置として、ユーザーが接続できないように、民間のプロバイダがネットを遮断する「ブロッキング」をすることが適当とする決定をおこなった。

しかし、どのユーザーがどのサイトにアクセスしようとしているか、事前に検知する仕組みであることから、憲法でさだめられた「通信の秘密」を侵害するという批判が法律家などからあがった。最終的にブロッキングは頓挫したが、課題が残ったままだった。

●ブロッキングせずに、海賊版サイトを一網打尽にする方法を考えついた

今回、赤松さんの代理人をつとめたのは、平野敬弁護士と山口貴士弁護士。いずれも「海賊版サイト」の対策にたずさわってきたエキスパートだ。

赤松さんの会見に同席した平野弁護士によると、これまでは、海賊版サイトの運営者を特定したうえで、民事・刑事の責任を追及してきたが、特定すること自体むずかしく、時間や費用の観点などから限界があった。また、運営者はすぐに雲隠れして、別のサイトを開設するような状況だったという。

「どうしてそうなるのか。海賊版サイトは大変儲かるからです。『漫画村』も、運営者が上げた収益は何億円という単位でした。その一部が民事裁判で負けたり、刑事裁判で罰金をとられたとしても、ペイできてしまうわけです。この流れをどうにかしないといけないという思いがありました」(平野弁護士)

法律家から批判の多かったブロッキングをせずに、どうにかして海賊版サイトを一網打尽にする方法はないか――。そうした状況の中で、平野弁護士らが考えついたのが、"資金ルートを断つ"という方法だった。

もし海賊版サイトに広告料をはらう広告代理店の責任を追及することが法律上認められれば、広告代理店は出稿時にサイトをチェックしなければならなくなる。「海賊版サイトを運営する"旨み"がなくなれば、どんどん減っていくのではないか」(平野弁護士)

このような既成の枠にとらわれない発想から、今回の裁判がはじまった。

●広告会社を著作権侵害の「ほう助」とした初の裁判例

赤松さんは今年1月、広告代理店「グローバルネット」とその子会社「エムエムラボ」を相手取り、損害賠償1100万円をもとめる裁判を起こした。そして、東京地裁は12月21日、赤松さんの請求を認めて、満額にあたる計1100万円の支払いを言い渡した。

田中孝一裁判長は「漫画村が閉鎖されるまで、著作権が侵害されている状態が継続しており、このような違法状態は、被告らによる広告費の支払いによって助長され容易にされていたといえ、これをもって『ほう助行為』と評価することができる」と判断。

さらに「漫画村が掲載する著作物の利用許諾を得ているかどうかを調査した上で、広告掲載依頼を取り次ぐかどうかを決すべき注意義務を負っていたが、その確認を怠ったもので、広告料を支払う行為は、注意義務に違反した過失によっておこなわれていた」として、広告代理店の責任を認めた。

平野弁護士によると、広告会社を著作権侵害の「ほう助」とした初めての裁判例とみられるという。

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