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 教師の立場「悪用」した性暴力、被害女性が法務省に要望「子どもが守られる法律に」
会見する石田郁子さん(2021年2月16日、弁護士ドットコムニュース撮影)

教師の立場「悪用」した性暴力、被害女性が法務省に要望「子どもが守られる法律に」

中学教師に性暴力を受けていた経験から、学校における性犯罪防止を訴えている都内在住のフォトグラファー、石田郁子さん(43)は2月16日、法務省の有識者会議「性犯罪に関する刑事法検討会」に学校教師による性暴力被害者を対象としたアンケート結果を提出した。

石田さんによると、アンケート結果から、学校での性暴力は、教師という「信頼ある立場」を悪用しているため、子どもが自身の被害を認識するまでに長期間を要することや、被害を認識していても拒否しづらい実態が浮き彫りになったという。

石田さんはこの日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見して、「教師への信頼が性暴力に利用されてしまっていることを知ってほしい。こうした実態をふまえて、刑法の見直しにいかしてほしい」と話した。

●最初の被害時に性暴力の認識が難しい

アンケートは2020年7月、インターネット上で実施した。回答したのは、学校教師による性被害の経験がある10代から70代(回答数149)。小中高、高専、大学、大学院、専門学校での被害が報告された。

アンケート結果によると、最初に教師に性暴力を受けたとき、「被害の認識ができなかった」人は77.9%と多数を占めた。

年代別だと、小学生で81.3%、中学生で71.1%、高校・高等専門学校生で85.7%、専門学校・大学・大学院生で66.7%となり、「年齢が若い小学生ほど被害認識が難しい傾向はあるものの、専門学校・大学・大学院生ですら3分の2が最初の被害時に性犯罪・性暴力と認識することができない」(石田さん)という。

また、被害だと認識できたとしても、加害教師に直接、苦痛や拒否を伝えることができなかったとする人は7割だった。

その理由として、「どうしていいかわからなかった」が36.9%が最多で、次いで「それが良いとか悪いとか判断がなかった」が22.3%、「拒否する発想がなかった」18.4%だった。「怖くてできなかった」という人は14.6%、「先生の言うことを疑えなかった」という人も4.9%いた。

●教師による性暴力、被害認識が遅れる理由

アンケート結果では、被害に気づくまでに長時間かかる実態も明らかになった。

被害に気づくまで「10年以内」と回答した人が22.6%と最多で、次いで「5年以内」が12.2%、「15年以内」が10.4%だった。中には30年以上かかった人も6.1%いた。被害時が低年齢であるほど、被害認識までに時間がかかる傾向があった。

なぜ、教師による性暴力の被害認識に時間がかかるのか。その理由として、「性的なことの知識や経験がなかった」という人が37.0%、それから「学校の先生を疑う発想がなかった 」が18.3%、「学校の先生が悪いことをするとは思っていなかった」が17.8%となった。

石田さんはこの結果について、「学校教師という信頼ある立場が被害認識の遅れに影響している」として、圧倒的に優位な地位にある教師による性暴力の特殊性を指摘。検討会に対して、次のように期待を寄せた。

「私自身、15歳から19歳まで、教師から性暴力を受けてましたが、長年被害に気づくことができないという経験をしました。子どもは、被害にあっても『先生が悪いことをするわけがない』と思っています。

刑法では時効を撤廃して、未成年を守れる法律にしてほしいと思います」

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