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2020年08月06日 10時00分

リツイート画像による「権利侵害」、ユーザーは「いいね」も気をつけるべきか? 最高裁判決を読み解く

山下真史 山下真史
リツイート画像による「権利侵害」、ユーザーは「いいね」も気をつけるべきか? 最高裁判決を読み解く
上下部分がトリミングされて表示される(弁護士ドットコム作成)

自分が撮影した写真の無断投稿が「リツイート」されたことで、「著作者人格権」が侵害されたとして、北海道在住のプロ写真家の男性が、ツイッター社を相手取り、発信者情報開示をもとめた訴訟。

最高裁判所・第3小法廷(戸倉三郎裁判長)は7月21日、リツイートした人の発信者情報開示を命じた2審・知財高裁判決を支持して、ツイッター社側の上告を退けた。

この判決では、リツイートによる「著作者人格権」(氏名表示権)の侵害が認められた。

リツイートの画面では、写真の上下が自動的にトリミング(切り取り)されて表示されて、氏名が記された部分が非表示となっていた。この仕様は、ツイッター社によるものだが、最高裁は、リツイートした人を「侵害者」と判断したのだ。

・最高裁判決(2020年7月21日)
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/597/089597_hanrei.pdf

今回の最高裁判決をめぐっては、すでにさまざまな報道が出ているところだが、はたして、ユーザーにどんな影響を与えるのだろうか。著作権にくわしい岡本健太郎弁護士に解説してもらった。

●理論上は「刑事罰」の可能性もある

――今後、画像のリツイートは「違法」になるのか?

今回の裁判は、侵害者に対する損害賠償請求や差止め請求ではなく、その前段階にある「発信者情報開示請求」です。プロバイダー(ツイッター社)に対して、侵害者のメールアドレスなどの個人情報の開示を求めるものです。

今回の最高裁判決を受けて、リツイート画面において、画像上の氏名表示が非表示となるような場合、リツイートした人は、氏名表示権侵害とされる懸念があります。リツイートした人の特定や個人情報の取得は必要ですが、差止めや損害賠償といった民事上の請求は認められやすくなるでしょう。

また、著作権法上、氏名表示権などの「著作者人格権」を侵害した人は、刑事罰の対象とされています(119条2項1号)。法定刑は、5年以下の懲役・500万円以下の罰金(併科あり)となっています。

親告罪であるため、公訴提起には、著作者などの告訴が必要であり(123条1項)、実際に刑事手続きに移行するか否かも事案次第です。ただ、理論上、リツイートした人は、氏名表示権の侵害となれば、刑事罰を受ける可能性も否定できません。

なお、この罪が成立するには、リツイートした人の故意の有無も問題となりえます。ただ、刑法の一般的な理解では、「違法であるとの認識を必ずしも要しない」とされているため、特に、今回の最高裁判決以降は、本件が先例となり、故意が認められやすくなるかもしれません。

――ユーザーは、どういうことに気をつければよいのか?

前提として、今回の最高裁判決は、すべてのリツイートを「氏名表示権侵害」としているわけではありません。

「ツイッター上に無断投稿された画像を含むツイート」をリツイートした場合の判断と理解されます。著作者本人が投稿した画像など、「ツイッター上に正規に投稿された画像を含むツイート」のリツイートは対象外と考えられます。

戸倉裁判長の補足意見も参考になりますが、ツイッターのユーザーは、画像を含むツイートをリツイートする際には、その画像が正規に投稿されたものか否か、言い換えれば、その画像の出所や著作者名の表示、著作者の同意などを確認したうえで、無断投稿の疑いがあればリツイートを避けるといった対応が無難だと思います。

氏名表示権侵害の観点からは、特に、画像上に著作者名、クレジットなどが表示されているときは要注意です。

●「いいね」は判断されていないが・・・

――リツイートに似た機能である「いいね」は?

いろいろ試してみたところ、ツイッターの現在の仕様では、「いいね」されたツイートは、フォロワーのタイムラインには表示されますが、リツイートと異なり、「いいね」したユーザー自身のタイムラインでは表示されないようです。

また、フォロワーのタイムラインに表示される画像は、リツイートと同様にトリミング処理されたものであり、画像上に氏名表示があれば、その位置によっては非表示となりそうです。

さて、今回の最高裁判決は、リツイートを問題としており、「いいね」への直接的な言及はありません。また、前提とした事実関係からして、リツイートした人の「各アカウントのタイムライン」で表示される画像が検討対象のようです。

このため、ただちに「いいね」が氏名表示権侵害とされるわけではないように思います。

ただ、「いいね」についても、リツイートと同様に、氏名表示が非表示となりえるのであれば、氏名表示権侵害とされる懸念は残ります。「いいね」の仕様を知らないユーザーもいると予想しますが、最高裁は、リツイートした人がツイッターの仕様を知っているか否かを問題としていません。

このため、「いいね」は、リツイートよりも心理的な負担が少ない印象ですが、先ほど述べたのと同様の対応が無難だとは思います。

●最高裁判決の「射程」を限定していく試みは有益だ

――今回の最高裁判決をどう捉えているか?

今回の最高裁判決は、元の画像に氏名表示があり、リツイート画面上で、それが非表示となった事案です。逆にいえば、「もともと氏名表示がない画像を含むツイート」をリツイートしても、氏名表示権侵害にはならないかもしれません。

しかし、今回の事案で、2審の知財高裁は「トリミング表示が同一性保持権侵害になる」という判断をしています。最高裁も、この判断は否定していません。

このため、トリミング処理がおこなわれる現在の仕様では、「無断投稿された画像を含むツイート」のリツイートは、(元の画像上の氏名表示の有無にかかわらず)同一性保持権侵害とされる可能性もあります。

トリミング処理や、氏名表示の非表示について著作者人格権侵害を認める考え方は、リツイートに留まらず、それ以外のインラインリンク(≒埋め込み型のリンク)にも影響が及びうるものです。

リツイートはインラインリンクの一形態ですが、こうした行為には、自身の関心を対外的に示すといった表現行為の側面があるように思われます。林景一裁判官の反対意見にも似た示唆がありますが、今回の最高裁判決により、リツイートなどのインラインリンク、ひいてはインターネット上の表現行為が委縮していく懸念もあるところです。

一方で、今回の最高裁判決は、ほかの著作物の利用の場面と同様に、リツイートの際にも、画像の利用者に出所確認などの注意を促すものであり、うなずける部分も少なくありません。ただ、過度の萎縮を防止するといった観点から、最高裁判決の適用範囲(射程)を限定していく試みは有益と考えています。

また、グローバル企業であるツイッター社が、日本向けにどこまで侵害防止のために、仕様変更や周知を図っていくのかは不明です。ただ、ツイッター社に対しては、利用者が安心して利用できるような環境を整備していくことを期待したいと思っています。

取材協力弁護士

岡本 健太郎(おかもと・けんたろう)弁護士
骨董通り法律事務所。弁護士・ニューヨーク州弁護士。神戸大学大学院客員准教授。「著作権Q&A」(宣伝会議・2018年10月から連載中)など。

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