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2020年07月23日 08時14分

リツイート画像による「権利侵害」…原告代理人が注目する「最高裁判決」のポイント

山下真史 山下真史
リツイート画像による「権利侵害」…原告代理人が注目する「最高裁判決」のポイント
上下部分がトリミングされて表示される(弁護士ドットコム作成)

ツイッター上で、自分が撮影した写真を無断で使った投稿がリツイートされたことで、「著作者人格権」が侵害されたとして、北海道在住のプロ写真家の男性が、ツイッター社を相手取り、発信者情報開示をもとめた訴訟。

最高裁判所第3小法廷(戸倉三郎裁判長)は7月21日、リツイートした人の発信者情報開示を命じた2審・知財高裁判決を支持して、ツイッター社側の上告を退けた。この判決はネット上で高い関心を呼んでいる。

・最高裁判決(2020年7月21日)
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/597/089597_hanrei.pdf

●プロ写真家の氏名がカットされて表示されていた

ざっくりいえば、あるユーザーがツイッター上で、原告のプロ写真家の写真(下部に氏名が記されたもの)を無断投稿した。そのあと、別のユーザーたちがリツイートしたという事案だ。

ツイッターは、写真の上下部分が自動的にトリミングされて表示される仕組みとなっている。原告の写真がリツイートされたときも、氏名が記された下部がカットされて表示されていた。

そのため、原告はリツイートによって、著作者人格権(氏名表示権)が侵害されたと主張した。一方で、ツイッター社側は、ユーザーがトリミングされた画像をクリックすれば、元の画像を見ることができると反論していた。

そして最高裁は、著作者人格権(氏名表示権)の侵害を認めた。

●原告代理人が考える判決のポイント

最高裁で争点となったのは、(1)リツイートは著作者人格権(氏名表示権)の侵害になるか、(2)HTMLなどの情報も「侵害情報」にあたるか――だった。

ネットで関心を集めたのは(1)で、すでにさまざまな報道が出ているところだが、原告代理人をつとめた齋藤理央弁護士は(2)に着目している。齋藤弁護士に聞いた。

――最高裁の判決のポイントは何か?

齋藤弁護士:今回の判決のポイントは、HTMLなどの情報を侵害情報と認めた点にあると考えています。

米国の裁判例で採用された「サーバーテスト」という考え方があります。画像の送信者の責任だけを問えばよいというものです。今回のケースでいえば、画像の送信者とは、最初に無断投稿したユーザーのことです。

これまでは、日本でもこの考え方が妥当するという見解が主流でした。しかし、今回の最高裁判決は、HTMLなどの組み込み情報の送信者(リツイートした人)も著作権法上の責任を負う場合があると示しました。

米国の裁判例においては、サーバーテストと対比されて「インコーポレーションテスト」と呼ばれています。日本の著作権法で、一部インコーポレーションテストの観点からも権利侵害が肯定される場合があると、正面から認められた点で、画期的な判例であると評価しています。

●クローズアップされていない深刻な問題

――今後、どんな影響があるのか?

齋藤弁護士:今回の裁判で問題になっているのは、インラインリンク(リンクの一種)という画像表示技術です。この技術はリツイートだけでなく、インターネットのあらゆる場面に使われています。

リツイートは、実はインラインリンクの中でも最も違法性が低い類型だと考えられます。そんなリツイートを題材にインラインリンクの違法性を争わなければならなかったのは、今回の裁判を通して、本当にシビアなところで、苦しみ続けました。

しかし、その最も違法性の低いインラインリンクについても、最高裁が違法と判断したので、今後あらゆるウェブサイト上で普通にみられるインラインリンクは、著作者人格権を侵害しないように慎重におこなわれる必要が出てきます。

一方で、リツイートによる著作財産権の権利侵害については認められませんでした。最高裁判決を前提にすると、権利侵害の側面が強いインラインリンクについても、著作財産権はまったく機能しない可能性があるのです。

この点はクローズアップされていませんが、深刻な問題を引き起こすのではないかと考えています。

――どういう深刻な問題があるのか?

齋藤弁護士:たとえば、弁護士ドットコムのマスコットキャラクターである「ほうすけ」のツイッターアカウントの画像ファイルを私のウェブサイトにインラインリンクで表示してみました。

画像タイトル 齋藤弁護士のウェブサイトにインラインリンクを表示してもらった

齋藤弁護士:この使い方で、著作権を侵害しない可能性が高いということです。しかし、どう考えても結論としてはおかしいと考えています。一方で、著作者人格権については、リツイートのような違法性の高くないインラインリンクもすべて違法としてしまう可能性があるのです。

●デジタル時代に適合する著作権法に

――ユーザー感覚に近い林景一裁判官の反対意見や、逆に厳しい戸倉裁判長の補足意見についてどう思うか?(https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/597/089597_hanrei.pdf

齋藤弁護士:林景一裁判官の反対意見は、実際にツイッターのアカウント(@kpico1)を持っている立場から、ユーザーの気持ちを代弁されたのだと思います。

私自身もツイッターアカウントを持っており、代理人という立場を離れてツイッターユーザーとして考えれば、林景一裁判官の意見に同調できる部分もあります。何より、もっとも違法性の低いインラインリンクの類型であることは、裁判で苦労し続けた私が一番よくわかっています。

その反面、戸倉裁判長の補足意見もユーザーおよびツイッター双方に配慮を求めるもので、正当なものであると思います。特に、戸倉裁判長の補足意見で注目したいのは、「現行著作権法下で」というくだりです。

現行著作権法は、インターネット環境がまったくない昭和45年(1970年)に制定された法律です。

しかし、今日において、創作や表現をめぐる環境は激変しています。そうしたデジタル全盛の現代において、50年前につくられた現行著作権法が正しく機能できているのか、疑問もあります。

先ほど述べたとおり、インラインリンクの中でも違法性の低いリツイートについても違法となる著作者人格権と、違法性の高いインラインリンクにもまったく権利が及ばない可能性がある著作財産権という現行著作権法は、やはり、デジタル時代を規律するルールとして、歪であると言わざるをえません。

そして、司法の最高府である最高裁判所が現行著作権法を適用した結果が、歪だという意見が多数派であるなら、それは、現行著作権法をデジタル時代に適合したものに改善する議論を国民全体ではじめるサインなのかもしれません。

また、今回の判例が、創作者と利用者や社会の関係をより円滑に規律するルールへ向けた議論の契機の一つとなるなら、代理人としてこの事件に関われた身としてもとても光栄なことです。

――最後に、現在のインターネット環境をどうとらえるか?

齋藤弁護士:インターネットは素敵な写真やイラスト、文章や動画などが無限に湧いてくる泉のように考えている利用者もいるかもしれません。しかし、実際はそうではなく、すべての表現物は苦労して作成している創作者がいます。その創作者を蔑ろにするのではなく、最大限配慮したルールをつくれば、インターネットにはもっと質の高い表現物がもっとたくさん出回るようになるのかもしれません。

取材協力弁護士

齋藤 理央弁護士
I2練馬斉藤法律事務所。東京弁護士会所属・著作権法学会会員。著作権など知的財産・IT法など、コンテンツと法律の問題に力を入れている。著作権に関する訴訟等も複数担当し、担当事案にはリツイート事件などの重要判例も含まれる。

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