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マスク争奪戦「ゲリラ販売」でも限界…ドラッグストア、「店内待機」する客に苦慮
都内のあるドラッグストアでは、4月半ばからマスク の「ゲリラ販売」が始まった(2020年4月、弁護士ドットコムニュース編集部撮影)

マスク争奪戦「ゲリラ販売」でも限界…ドラッグストア、「店内待機」する客に苦慮

新型コロナウイルス感染拡大にともなうマスク不足が4月も続いている。国内メーカーは24時間体制で通常の3倍の増産をおこない、国は輸入も含めて3月には6億枚以上を供給したとする。また、3月15日からは国民生活安定緊急措置法に基づき、マスク転売も規制している。

しかし、薬局やドラッグストアなどの現場では依然、品薄状態だ。数少ない入荷のマスクを求め、店舗に早朝から「行列」を作って買い占める消費者が続出。近隣住民から苦情が出たり、他の時間帯での購入の機会を設けてほしいとの要望があったことなどから、開店時の販売をやめて、時間を予告しない「ゲリラ販売」に切り替える店舗が出ている。

ところが、こうした措置にこれまで購入できなかった人たちからは賞賛の声が上がる一方、SNSでは、ずっと店内にとどまり、マスクの棚の前に座り込んで待つ人や、駐車場でゲリラ販売を「待機」する人が報告され、新たな悩みの種となっているという。今、現場では何が起きているのか。(弁護士ドットコムニュース・猪谷千香)

●早朝行列でトラブル続出、「三密」で感染リスクも

これまで薬局やドラッグストアでは、マスクをめぐる混乱を避けるために、さまざまな対策をとってきた。ところが、争奪戦は激化の一途をたどり、開店時の購入を目指し、早朝から並ぶ消費者の列は絶えない。

都内のある駅前ドラッグストアでは、「マスクありません」と入口に大きな注意書きを出している。この店舗ではマスク販売に際して整理券を配布していたが、整理券を求めて早朝から消費者が店舗前の道路に長蛇の列をつくってしまい、歩行者や自動車のドライバーから苦情が出ていたという。

スタッフによる行列整理も限界があり、人が密集することで感染リスクの高い「三密」の状態におちいってしまうことから、この店舗では4月5日からマスクの販売時間帯を開店時から営業時間内の不定期へと変更した。

こうした「ゲリラ販売」は、全国に広がっている。

ドラッグストアチェーンの「ツルハドラッグ」でも、4月13日からマスク販売の時間帯を不定期へと変更した。すでに一部の店舗で先行していたが、全国1200店舗(福岡県をのぞく)の規模で実施するという。

その理由として、早朝から寒い中、多くの人が並ぶことで、「購入をめぐるトラブル」などが生じていることを説明する。また、早朝から並ぶことが難しい人から、他の時間帯にも販売してほしいという要望があったこと、転売目的と思われる人が定期的に列に並び、購入しているケースもあったとする。

系列を含めて、全国1300の店舗を展開する「スギ薬局」でも、すでに4月10日から実施。店内で待つ人には「ご遠慮いただきますようお願いいたします」と呼びかけている。「ココカラファイン」や「マツモトキヨシ」などのドラッグストアチェーンでも、やはり販売時間を変更する店舗が増えている。

●「ゲリラ販売」を待って、1日中店内をうろうろ

しかし、こうした「ゲリラ販売」に対して、「これでマスクが買える」と喜ぶ声がある一方、今度は、店内や駐車場で「待機」する人が各地で報告されている。店舗と絶対にマスクを求めようとする一部の消費者との「いたちごっこ」は止まる気配がない。

SNSでは、「男性が1日中、店内をうろうろしてマスクの販売を待っている」「駐車場で家族連れが待機していて、車が停められない」といった声をはじめ、中には「高齢者のグループが店内待機を禁止されたため、1人を店内に残して他のメンバーは近くの喫茶店に待機している」などの情報も報告されている。

こうした事実はあるのだろうか。スギ薬局を展開する株式会社スギ薬局(本社:愛知県大府市)の担当者は、「普段からSNSをモニタリングしていますので、今回も一部の店舗で待機されるお客様がいらっしゃることは把握しております」と話す。

スギ薬局では通常、SNSを通じて知った問題や、各店舗から集まってくる課題に対し、臨機応変に対応しており、マスク不足が本格化した2月からは販売をめぐるマスク問題にもさまざまな対処をしてきたという。

ただし、今回、マスクの販売方法を変更したのは4月10日であり、「まだ4日しか経っていませんので、今後の状況をみながら、必要に応じてできる限りの手を打つつもりです」とする(4月13日取材時)。

●「いろいろな言葉を浴び続けているが、それも含めて仕事です」

政府はマスク不足の解消に必死だ。しかし、「供給の回復に向かっているという兆しが、感じられません。それでも大手チェーンは入荷する方だと思いますが、一瞬でなくなります。少量ながらも確保するように頑張っていますが…」とスギ薬局の担当者は語る。

マスク不足の本格化にともない、薬局やドラッグストアは2月から、懸命の対応をしてきたが、それにも限界がある。

「なんとか供給を増やしていただき、新型コロナ以前のように普通に購入できる状態に戻ってほしいです。感染に対する恐怖心や不安感が長期に続く中で、さまざまな問題も起きてくるのだと思います。

2月から現場では毎日、できる限りの対応はしていますが、どなたにとってもベストということが難しく、いろいろな言葉を浴び続けることになっています。でも、それも含めて私たちの仕事です」

スギ薬局では店舗約1200店のうち、8割で処方箋の対応をしているほか、約500店舗で薬剤師の訪問など在宅医療にも取り組んできた。

「薬局は地域の医療機関とも関係が深いですし、ドラッグストアでは生鮮食品以外の生活必需品をすべて売っています。現場では感染リスクを背負いながら、私たちは医療機関とともに、最後までやり続ける立場にあります。頑張ろうと声をかけながら取り組んでいます」

政府はこの4月、7億枚の供給を目指している。シャープが3月24日から三重県内の工場でマスクの生産をスタートするなど、国は電機メーカーなどの参入にも力を入れているが、一般消費者への流通回復までには至っていない。一部の買い占めを止め、マスクが足りない人へくまなくゆきわたるよう、1日も早い解消が望まれている。

マスクに関する情報は、経産省のサイトで随時更新されている( https://www.meti.go.jp/covid-19/mask.html )。

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