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加藤茶さん「なりすまし」ツイート、志村けんさん訃報であいつぐ 法的問題は?
実際の投稿の1つ(すでに削除済み)

加藤茶さん「なりすまし」ツイート、志村けんさん訃報であいつぐ 法的問題は?

タレントの志村けんさんが3月29日、新型コロナウイルス感染にともなう肺炎のため亡くなった。志村さんと交友関係のあった著名人が追悼のメッセージを寄せ、ネットでも志村さんを追悼するコメントが多数あがった。

そんな中、ツイッター上に、「ザ・ドリフターズ」のメンバーである「加藤茶」さんを名乗ったアカウントが複数現れ、

「志村の分まで長生きしなきゃだよな ツイッターも始めて、フォローっていうの? してくれると嬉しいなぁ」

などと、志村さんを追悼する内容のツイートがされた。

しかし、これらのアカウントは、加藤さんになりすましたものだとみられる。中には、フォロワーを増やすための悪質ななりすましだと批判されているものも。加藤さんを名乗ったアカウントによるツイートは既に一部削除されているが、まだ削除されていないものもある。

SNS上で著名人になりすましてコメントすることには、どのような法的問題があるのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。

●なりすますこと自体の法的責任は?

ーーSNS上で著名人になりすますことには、どのような法的問題がありますか

「まず、『違法』という場合、刑事上違法な場合と民事上違法な場合があり得ます。

刑事上違法な場合とは、刑法に抵触する行為がある場合のことを指しますが、『なりすまし』を罰する法律はないため、刑法上違法だということはできません。

一般的な感覚とは異なるかもしれませんが、「なりすまし」をすることそれ自体が直ちに刑法に抵触することはありません。

他方で、民事上は、『なりすまし』をすることは、なりすまされている人の氏名権やプライバシー権を侵害しているという余地があります。

氏名権とは氏名を冒用(承諾なく名称等を用いること)されないことなどを内容とする人格権です。

また、近時は『他者との関係において人格的同一性を保持する利益』を指す『アイデンティティ権』という考え方も提唱されています。

したがって、『なりすまし』の方法によっては、これらの権利を侵害する違法なものという余地があります。この場合、権利侵害を受けた人は、削除や損害賠償を求めることができます」

ーーなりすますとしても、「本人ではない」と明言している場合はどうなりますか

「『本人ではない』と明言している場合は、『なりすまし』であると言うことがそもそも難しいです。

たとえば、ツイッターではルール上、パロディアカウントというものを認めています」

●なりすましツイートの法的責任は?

ーーなりすました上でツイート等することは、なりすますこと自体とは別の法的問題があるのでしょうか

「一般的な内容しか投稿していない場合には、それをもって違法としていくことは困難です。

しかし、なりすました上で他人の名誉やプライバシーを侵害する発言をしている場合には、なりすまされた人がそのような発言をする人物であると見られる、という点で名誉毀損になる余地があります。

したがって、このような発言をしている場合には、なりすまされた人が民事上、刑事上、名誉毀損を主張していく余地があります。

なお、権利の主体は『人』ですが、ここでいう『人』とは生きている人のことを指し、死者は含まれません。そのため、死者になりすましても責任追及はされにくいといえます。

ただし、刑法は、死者の名誉毀損について『虚偽の事実を摘示』した場合には罰するとしているため、死者に関する虚偽の事実をツイート等していた場合には、死者に対する名誉毀損罪が成立することになります」

●アカウントを乗っ取られて、なりすまされてしまった場合は?

ーー「なりすまし」では、アカウントを乗っ取られてしまったと主張されることがあります。本当に乗っ取りであった場合、乗っ取った人の責任はどうなりますか?

「仮に乗っ取りであった場合には、不正アクセスをしているということになるため、不正アクセス禁止法に抵触します。

同法違反は、『3年以下の懲役又は100万円以下の罰金』とされています」

●「なりすまし」、するべきでない

ーー「なりすまし」はしばしば問題になっています

「仮に『なりすまし』が違法にならない場合であったとしても、なりすまされた人からすればかなり不快なものであり、また、特に死者に関連するような行為は不謹慎であるといえます。

自分がされて嫌なことは他人にもしない、ということは小学校の道徳でも習うことだと思うので、そのような行動はするべきではないでしょう」

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

清水 陽平
清水 陽平(しみず ようへい)弁護士 法律事務所アルシエン
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022~2023年) の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ・ドラマ「しょせん他人事ですから~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を行っている。

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