2020年03月31日 17時35分

卒業旅行で新型コロナに感染続出、祝賀会や卒業式に参加した学生の責任問える?

卒業旅行で新型コロナに感染続出、祝賀会や卒業式に参加した学生の責任問える?
写真はイメージです(プラナ / PIXTA)

福岡県在住で、県立広島大学を3月に卒業した女性(20代)が3月29日、新型コロナウイルスに感染が確認される前に、症状がありながら大学の卒業式に参加していたと報じられました。

大学によると、この卒業生は1月以降、大学が全学生に海外旅行の自粛要請をする中、3月5日から14日にかけて欧州を旅行。帰国した後、23日に広島キャンパスの学位記授与式に参加していました。卒業生はその後、28日にPCR検査を受け、陽性と判明しました。

大学では感染拡大防止のため、卒業式の全体式典は中止、学科や専攻単位での学位記授与式に切り替えていました。また、参加する学生に対しては、「発熱または咳などの呼吸器症状がある卒業生・修了生の方は出席をご遠慮ください」と呼びかけていました。

弁護士ドットコムニュースの取材に対し、大学ではこの卒業生について、「前日に鼻水などの症状があったものの、当日の発熱はなく、健康状態が悪かったという話は聞いていません」とし、参加を控える条件にはあてはまらなかったと話しています。

また、この卒業生と一緒に学位記授与式に参加した卒業生らは数十人で、現在のところ感染者はいないとのことです。大学では卒業生や広島キャンパスの学生に対し、不要不急の外出を取りやめるよう、呼びかけているとのことでした。

同じく京都市の京都産業大学でも、男子学生3人が3月2日から13日にかけて、卒業旅行で欧州を訪れて感染。男子学生らがゼミの卒業祝賀会や送別会などに参加などから感染が広がり、少なくとも21人が感染するクラスターが発生したとみられています(3月30日現在)。京都市では、男子学生らと接触した学生たちについて健康状態を調べていると報じられています。

京都産業大学では、「皆様には、大変ご心配とご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申します」とホームページで謝罪しています。学生らに対し、ネットでは批判が高まる一方、「自粛要請だけなら仕方がない」など同情の声も寄せられています。

どこまで学生に対して責任を問えるのでしょうか。濵門俊也弁護士に聞きました。

●わざとうつせば、刑事責任問われる可能性も

大学からの自粛要請があったにも関わらず、欧州に卒業旅行に行っていた学生に対して、大学側は法的な責任を問えるのでしょうか?

「大学側にどのような損失があるのかが分かりませんが、あえて想定すれば、大学から感染者を出したことで入学者が減少したとか、大学の名誉を毀損されたといったことでしょうか。

ただ、大学としてできることは、あくまでも『要請』にとどまり、『禁止』できるわけではありません。なかなか法的責任の追及は難しいと思います」

感染が確認される前ですが、鼻水などの症状があったにもかかわらず、学位記授与式に参加した学生について、もし同席した人が感染した場合、損害賠償請求などは可能なのでしょうか?

「今回の新型コロナウイルスはまさに『未知』のものであり、感染のメカニズム等もいまだ分かっていません。飛沫感染や接触感染の『可能性』があるだけで、陽性反応が出た学生・卒業生が感染源と特定できるかどうかは難しいと思います。

もし、感染が判明したにもかかわらず、式に参加したとすれば、あえて飛沫感染や接触感染をさせてやる(確定的故意)、そのように積極的に認識していなかったとしても、飛沫感染や接触感染させたとしてもやむを得ないという未必の故意があると評価できます。

よって、刑事責任としては威力業務妨害罪や傷害罪に問われ得るかもしれません。

民事責任としては不法行為責任が問われ得ます」

●「感染者に対する不当な差別や偏見、いじめは人権侵害」

ネットでは学生たちに批判が集まる一方で、「自粛要請だけなら卒業旅行に行くのも仕方ない」「旅行代金のキャンセル料の補償がされないのであれば、行くしかないのでは」「他の大学でもいつ起きてもおかしくない」といった同情の声もありました。

県立広島大学では次のようにコメントしています。

「新型コロナウイルス感染症に関連して、本学の留学生をはじめとした外国人や罹患者(国籍は問わない)に対する誤った情報に基づく不当な差別、偏見、いじめ等は、重大かつ悪質な、あってはならない人権侵害です。

本学の学生に対しては、このようなことがないよう、これまでも日常的な指導を通じて啓発しているところです。今回の事案につきましても、同様に対応してまいりますので、保護者の皆様におかれましても御理解、御協力を賜りますようお願いします」

取材協力弁護士

濵門 俊也弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えている。依頼者の「義」にお応えしたい。

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