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2019年12月31日 09時39分

ハロプロ、新年から「ジャンプ禁止」…「ヲタクは舞台装置、棒立ちとかありえない」と困惑も

ハロプロ、新年から「ジャンプ禁止」…「ヲタクは舞台装置、棒立ちとかありえない」と困惑も
写真はイメージです(Graphs / PIXTA)

今年10月、ハロプロファンの間に、衝撃が走った。ハロプロ、つまり「ハロー!プロジェクト」が公式サイトでコンサート・イベント中の「ジャンプ行為」を2020年1月2日から禁止すると発表したのだ。

しかし、アイドルの知識がない記者にとって、そもそも禁止されるほどの「ジャンプ行為」とは何かがよくわからない。公式サイトをよく読むと、次のように書かれていた。

・周囲のお客様の視界の妨げや周囲のお客様との接触。それに伴う、お客様同士のトラブル
・ジャンプしたお客様の転倒やそれに伴うお客様本人、及び周囲のお客様の負傷
・座席や会場設備の破損

ライブやコンサートでリズムをとって跳ねることは確かにあるが、負傷するほど「過度なジャンプ行為」に想像が及ばない。そこで、自らを「ハロヲタ」と呼ぶハロプロファンの友人に聞いてみた。

現場では一体、何が起きているのか?

●2017年には「ジャンプした男性が倒れこみ、女性がケガ」

——ハロプロが問題視する「過度なジャンプ行為」とはどんなものなんですか?

「簡単に言うと推しへの愛が溢れすぎるあまり、曲に関係なくひたすら連続ジャンプを披露してしまうヲタクがいるのです。ヲタク用語で『マサイ』と呼びますが、民族差別のニュアンスを含む気がしますので、使わない方がいいと思います」

——では、その連続ジャンプをすることで、どんな影響があるのでしょうか?

「これをやられると後ろの席の人はステージが見えないので、これまでも度々、問題になっていました。特に近年は女性のヲタクが現場に増えてきたことで、ただでさえ前に男が立つと見えづらいのに、さらに見えないという事態に。

2017年末の武道館公演では、ジャンプしてバランスを崩した男性が転んで、前の席の女の子が巻き込まれてケガをする事故も起きたとTwitterで報告されています」

——現場では、すでに事故が起きていたのですね。

●「過度なジャンプと迷惑なジャンプの線引きは難しい」

「さらに話は続くのですが、こうした『過度のジャンプ行為』とは別に、メンバーがジャンプを煽ったり、ヲタクが揃って跳ぶ定番の曲もあります。たとえは古いですが、X JAPANの『Xジャンプ』みたいなものですね。

これを『統率のとれたジャンプ』と呼びます。また、ハロプロには『フリコピ』といってメンバーのダンスを真似する応援スタイルがあるのですが、これもメンバーがジャンプする振り付けなら一緒にジャンプします」

——な、なるほど。ジャンプにも色々な種類があるのですね。

「年明けからはあの通達により、今まで迷惑行為という共通認識のあった『過度なジャンプ行為』以外のこれらのジャンプも禁止される見通しとなり、ヲタクの間に議論百出となっております。で、ここからが本題なのですが…」

——今までは前振りだったんですか。

「どこまでが統率のとれたジャンプで、どこからが迷惑なジャンプなのか、という線引きは難しい。極端な話、自分は跳ばないからジャンプはすべて迷惑行為だという人もいて、今回は結果的にそういう人たちの意見が通ったわけです。

ところが、アイドルのコンサートにおいては、客席の盛り上がりは必須だと考える人たちにとって、統率のとれたジャンプは『跳ぶべきもの』であって、『跳ばれたら見えない』なんてのは当たり前の話なんですね。少なくとも、メンバーが観客をあおる曲がある以上、そこは跳ぶことが認められないとおかしいんです」

●「ヲタクは舞台装置だから、棒立ちはありえない」

——ジャンプは、通常のコンサートやライブでも普通に行われますよね。

「はい。ただ、面倒くさいのですが、ジャンプ禁止を支持する人たちの中には、とにかく自分は観賞したいんだと、コールやフリコピも邪魔だからやめてほしいという人がいるわけです。

もうこうなると根本的に相容れない。ヲタクは単なる観客ではなくコンサートの舞台装置の一つだと考える自分のようなヲタクにとって、棒立ちはありえない」

——ヲタクは舞台装置……。

「で、これが認められると今度はコールするなとかフリコピするなとか、とにかく規制する方向に行きそうなことを多くのヲタクが危惧しています。

さらに言えば、そもそも禁止だった過度なジャンプの取り締まりを事務所が本気でやってきたのか疑問も出ています。現場で『注意された、つまみ出された』という話を全然聞かないのです。そこへ、いきなり他のジャンプまで禁止となることへの抗議の声はかなり大きいですね」

——なぜそうまでして、ハロプロはジャンプを禁止するのでしょうか?

「事務所はとにかく新規のファンに入ってきてほしい。一般人でも入りやすい現場にすればファンが増えると思っている節があります。しかし、果たしてそれで魅力が減らないか、今までいたファンが逃げないか……。新年からは、コンサートの質にも影響しそうだなと思ってます」

ハロプロファンの友人はそう語ると、「大晦日は跳び納めをしてきます」と少し寂しげに言い残し、去って行った。12月31日は中野サンプラザで公演がある。

●「ジャンプ行為禁止に違反したら?」弁護士に聞いてみた結果…

ハロプロファンによるジャンプへの思いはよくわかったものの、弁護士ドットコムニュース編集部としては、ジャンプ行為禁止は法的にどのようなものかも検討してみたい。アイドルに詳しい河西邦剛弁護士に聞いてみた。

まず、ジャンプ行為の禁止は、どのような権利で行われるのだろうか?

「コンサートの主催者には施設管理権というものがあります。なので、施設管理権を根拠にジャンプ禁止権を発動させていると考えられます。

そもそもコンサートを見に来たお客さんは、演者のパフォーマンスを見ることが前提になっていて、お客さん自身がジャンプなどのパフォーマンスを披露する場ではありません。コンサートにおいては、お客様自身の表現の自由が容認されることは難しいでしょう」

では、もしジャンプ行為禁止に違反した場合、どのような責任に問われる?

「施設管理権を根拠に最悪の場合、退場処分ということもあり得ます。

ただ逆に、ジャンプ禁止権の一時的解除もあり得ます。会場の熱気が高まる中、メンバーが『皆さん一緒に飛びましょう!』と言った場合には、その瞬間は一時的にジャンプ禁止権が解除されたと法的に言うことができます。

ジャンプ禁止権は法律や契約のように絶対的に決まっていて動かせないものではなく、ルールである以上都度変更することも可能なものです。

いずれにしても、コンサートの良さは演者とファンの双方向性にあることは間違いありません。そしてその双方向性があるからこそ、その場でしかない高揚感や感動が生まれるのではないでしょうか。参加するお客さんとしても自分だけが楽しむという発想ではなく、周りと一緒に楽しむというのが大切なんだと思います」

取材協力弁護士

河西 邦剛弁護士
「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。アイドルグループ『Revival:I(リバイバルアイ)』のプロデューサー。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/

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