2019年10月29日 14時39分

都議「東京五輪マラソンの札幌変更はIOCファースト」、選手や都民へのダメージ懸念

猪谷千香 猪谷千香
都議「東京五輪マラソンの札幌変更はIOCファースト」、選手や都民へのダメージ懸念
東京五輪のマラソン開催をめぐり、日本外国特派員協会で会見する都民ファーストの山田浩史都議(右)と白戸太朗都議(2019年10月29日、弁護士ドットコムニュース撮影)

東京五輪のマラソンと競歩の開催地をめぐり、激しい攻防が続いている。東京都議会の最大会派である都民ファーストの会は10月29日、日本外国特派員協会(FCCJ)で会見、札幌への変更を決定した国際オリンピック委員会(IOC)に対して、「アスリートファーストではなく、IOCファーストだ」と強く批判した。

都民ファーストでは、もし札幌で開催した場合の新たなコストを340億円と試算しているが、これ以外にも、これまでかけたコースの遮熱性舗装費用300億円や、東京で9月に開催されたテストイベント費用数十億円などのコストが無駄となり、都民や都に与えるダメージが大きいとした。

また、都議らはIOCが札幌変更の理由を東京の暑さとしたことに、「2024年五輪が開かれるパリの今夏の気温は40度だった」と指摘。「東京や札幌の問題だけでなく、もう五輪を開催できる都市がなくなる。五輪の持続可能性に関わる問題」と訴えた。

●9月のテストイベントはIOCも「高評価」だったのに…

この日、会見したのは、都民ファーストの山田浩史都議と白戸太朗都議の2人。山田都議は、10月25日にIOCのジョン・コーツ調整委員会委員長が小池都知事との会談でプレゼンテーションした資料を明らかにした。

資料によると、IOCが札幌変更に動いた理由は、中東ドーハで9月、気温30度、湿度70%を超える中で開かれた世界陸上のマラソン競技にある。資料によると、女子マラソンに参加した選手68人のうち、ゴールできたのは40人だけだった。棄権した28人のうち16人は半分も走れなかったという。39人が救護テントに運ばれた。IOCは「これを東京五輪で繰り返してはならない」と説明している。

東京では9月、五輪のテストイベントとして、五輪とほぼ同じコースでマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)が開催され、大きな問題は報告されていない。山田都議は一連の流れに、疑念をあらわにした。

「IOCのトーマス・バッハ会長もMGCの運営を高く評価してくれていた。その後、何が起きたかわからないが、突然、10月16日に札幌への変更を検討していると伝えられた。その後、10月25日にはバッハ会長から『決定』だと言われました。IOCの調整委員会は明日(10月30日)から開かれるにも関わらず、こうした手続きは非常に問題だと考えます」

●IOC「早朝スタートだとヘリコプターから撮影できない」

IOCが指摘するのは、暑さの問題だけではない。東京都では暑さ対策の一環として、早朝スタートを提案してきたが、IOCは「アスリートファーストのコンセプトから、沿道に誰もいないコースを走らせることはできない」「夜明け前だとヘリコプターから撮影ができず、映像のクオリティが低くなる」といった理由で、これらも否定している。

都民ファーストでは、午前5時スタートを提案。東京では8月、すでに夜明けであると反論している。都民ファーストの比較によると、ドーハの女子マラソンがスタート時の気温32.7度、ゴール時の気温32.4度だったのと比較し、午前5時案であれば、スタート時の気温は27.1度、午前8時でも気温31.2度程度であり、コンディションは問題ないとした。

都民ファーストによる気温比較

山田都議は、「IOCは、メディアのヘリが飛べないのではないかという懸念をしていますが、午前5時は明るい上、アスリートファーストであるならば、メディアのヘリについて考慮するのはおかしい」と指摘。暑さの問題だけでなく、札幌変更は警備、新たにかかるコストなど、都民や東京都への影響は大きく、「数百億円にもなりえる」と懸念を示した。

●選手「準備不足の場所で走るのが不安」

自身もトライアスロン選手である白戸都議も、「東京での開催が決定してから6年。6回の夏が過ぎています。なぜ今さら変更なのか。これまで準備してきた選手や地元の人たちのことを考えていない。IOCファーストではないのか」と憤りをあらわにした。

白戸都議は、選手や競技関係者にインタビューを実施。「これまで、東京で走るために周到に対策して準備してきたが、(直前に変更になれば)準備不足の場所で走る方が不安がある」「7万人が入る新国立競技場にゴールするのが夢だった。それを奪われるのが悲しい」といった声が寄せられているという。

「マラソンは過酷なスポーツです。準備不足だと気温25度であっても危険です。でも、準備をきちんとしておけば、30度を超えても競技はできます。これは過去の大会でも証明されています」と白戸都議は説明。札幌変更による選手たちへのリスクに懸念を示した。

五輪におけるマラソンは沿道からも地元の人たちが応援できる花形競技であり、開催都市で開かれなかった例はないという。一方で、2024年の五輪開催が決定しているパリでは、今年の夏、40度を超える酷暑を記録した。山田都議と白戸都議は、「五輪の持続可能性に関わる問題」として、あらためて東京でのマラソン開催を訴えた。

10月30日からはIOC調整委員会が都内で開催される。IOCと東京都、大会組織委員会ら当事者がマラソンの開催について、最終的な決着を探るとみられる。

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