2019年09月17日 09時24分

養子縁組してない「再婚相手の連れ子」に金を盗られた! 継母が抱える苦悩

養子縁組してない「再婚相手の連れ子」に金を盗られた! 継母が抱える苦悩
写真はイメージです(Graphs / PIXTA)

再婚相手の連れ子(19歳)にお金を盗まれたという女性が、弁護士ドットコムに相談を寄せている。

「正直、金額はたいしたことはないんです。でも、やった行為がありえないですし、お金も返ってきません。最悪、夫(再婚相手)との離婚も考えています」と相談者は怒りを隠せない様子だ。夫は子どもを悪く言わないどころか、相談者を責めるのだという。

再婚相手の連れ子とは養子縁組をしていないという相談者。「家族間で物を盗んだ場合は罪にならないと聞いたことがあります。養子縁組していない場合でも、連れ子を罪に問うことはできないのでしょうか」と聞いている。

家族間で物を盗んだ場合、「犯罪」にならないのだろうか。刑事事件に詳しい星野学弁護士に聞いた。

●「窃盗罪」は成立するが、処罰されない?

ーー今回のように、再婚相手の連れ子がお金を盗んだ場合は「犯罪」になるのだろうか

「一応は窃盗罪(刑法235条)が成立します。しかし、連れ子と同居している場合には、『親族間の犯罪に関する特例』が適用され、刑が免除されるので、処罰はされないことになります」

ーー「親族間の犯罪に関する特例」とはどのようなものなのか

「刑法244条は、お金を盗んだ犯人と被害者との関係が、『配偶者、直系血族又は同居の親族』に当たる場合は、その刑(つまり、犯人に対する処罰)を免除すると定めています。この特別の定めを『親族相盗例』といいます。

親族間でおこなわれた犯罪については、個人が自由に処分できる財産に関するものである限り、国家が関与するよりも親族間の自治的解決を優先させる方が、親族間の関係を維持するのに役立つという考えがあります。そのため、このような特例が定められています。

ひとことで言えば『法は家庭に入らず』という思想です」

●養子縁組していない連れ子にも、同居していれば特例が適用される

ーー具体的に、だれに特例が適用されるのか

「特例が適用される親族関係は『配偶者、直系血族又は同居の親族』とされています。

これらの意味は民法の規定に従いますので、『配偶者』は正式に婚姻した関係をいい、いわゆる内縁関係は含まれません。また、『直系血族』も法律上の関係が必要なので、実子または養子に限られ、いわゆる連れ子(継子)は含まれません。

同居する『親族』は、配偶者のほか、6親等内の血族、3親等内の姻族のことをいいます(民法725条)」

ーー今回のケースでお金を盗んだ連れ子は養子縁組をしていないため、「直系血族」にはあたらない。このような場合は「親族」として、特例が適用されることになるのだろうか

「はい。被害者と同居していた場合に限り『同居の親族』にあたるとして、特例が適用され、処罰されないことになります。

19歳の少年については、将来、『罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする』おそれがあると認められれば、『ぐ犯少年』として、家庭裁判所の審判により処罰を受ける可能性もあります。ただ、実際は19歳という成人に近い年齢の者がそのような扱いを受ける可能性は低いはずです」

●子どもがお金を盗んだのは「何らかのサインだと捉えて」

ーー相談者は、再婚相手との離婚も考えているようだ

「たしかに、お金を盗むことは悪いことです。しかし、子どもがお金を盗んだ理由を考えずに、ただ行動だけを捉えて『犯罪だ』『許せない』『親である夫とは離婚だ』と子どもを責めるのは少し待たれた方が良いと思います」

ーー子どもがお金を盗むのは、なぜなのだろうか

「たとえば、お金が必要だったのに継母(けいぼ)にそれを言い出せず、悩んだ末にお金を盗むという行動に出た場合、子どもの善悪に対する判断能力の不足と親子関係に原因があります。このような場合、改めて親から犯罪が悪いことだという社会のルールを教え、お金が必要なときには気を遣わずに言うようにと諭せば済むこともあります。

特に、幼い子どもであれば、夫婦喧嘩が多い、ほかの兄弟姉妹と扱いが異なるなどの事情があるために、親の関心を引こうとしてお金を盗んでしまうこともあります。このような場合は『お母さんはあなたが大好きだからね』と抱きしめれば、解決することもあります。

『金がなければ、親の財布から盗めばいいじゃん』などと発言する友人から悪い影響を受けていたり、学校や職場でいじめ・脅しを受けていて、お金を持ってくるように要求されていたりするかもしれません。いじめ・脅しの徴候が見られる場合は学校・職場・警察に対応を依頼する必要があります」

ーーどんなに子どもに言い聞かせても解決できない場合、どうすればよいのだろうか

「もし、子どもに『お金を盗むことは悪いこと』だと理解する能力、あるいは犯罪の被害を受けた他人に共感する能力が不足・欠如している場合、風俗・ギャンブルなどにのめり込んで依存している場合には、教育機関・医療機関などに相談をして、今後の対応についてアドバイスを受ける必要があるかもしれません。

窃盗は、単に社会のルールを軽視して楽をしてお金を得たいという場合だけでなく、その背景にさまざまな問題が隠れている場合があります。子どもがお金を盗んだときは、何らかのサインだと捉えて対応を考える必要があるでしょう」

取材協力弁護士

星野 学弁護士
茨城県弁護士会所属。交通事故と刑事弁護を専門的に取り扱う。弁護士登録直後から1年間に50件以上の刑事弁護活動を行い、事務所全体で今まで取り扱った刑事事件はすでに1000件を超えている。行政機関の各種委員も歴任。

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