高速道路上で自動車の開閉できる天窓(サンルーフ)から身を乗り出して撮影らしき行為に及んでいる人を撮影した動画がSNSで話題となっている。
動画では、前方の車両で上半身を乗り出している人物が隣のレーンを走行しているバイクの集団をスマホで撮影しているとみられる様子がうつっていた。案内標識の内容から、茨城県内の常磐道での出来事だったようだ。
動画が最近撮影されたものかどうかは定かではないが、高速道路では原則としてスピードを出して走行するため、窓から身を乗り出すのは特に危険な行為といえそうだ。具体的にはどんな違反行為に当たるだろうか。冨本和男弁護士に聞いた。
●シートベルト違反以外にも「都道府県規則で規制されているケースもある」
冨本和男弁護士は、「高速道路で窓から身を乗り出す行為は、自身だけでなく、同乗のドライバーや周囲をも巻き込みかねない危険な行為」と指摘する。
「サンルーフから上半身を乗り出しているとすれば、シートベルトは付けていないでしょうから、シートベルトの装着義務違反(道路交通法71条の3)になります。
ただしこの義務はドライバーに課せられているものなので、身を乗り出した本人ではなく、ドライバーの違反となります。
違反した場合の罰則や反則金はありませんが、高速道路(高速自動車国道および自動車専用道路)でのシートベルト装着義務違反は、運転席や助手席のほか、後部座席についてもドライバーに対して違反点数「1点」が付されます」
もっとも、ドライバーだけでなく、身を乗り出した本人が責任を問われるケースもあるようだ。
「都道府県の道路交通規則が窓から身を乗り出す行為を禁止している場合もあります。
今回の動画が撮影されたという茨城県であれば、茨城県道路交通法施行細則が「進行中の車両等からみだりに身体を出すこと」を禁止しています(22条7号)。違反した場合は、「5万円以下の罰金」が科される可能性があります(道交法76条4項7号、120条1項10号)。
この禁止行為違反は、シートベルトの装着義務違反と異なり、身を乗り出した本人に成立します」
●過去には悲惨な死亡事故も
過去にはサンルーフからの乗り出しで死亡事故も発生している。
2013年には山口県内でワンボックスカーのサンルーフから顔を出していた6歳児が高架橋に取り付けられた表示板に頭を打ち付け死亡している。
また、1989年には広島県内で鉄道のガードを通り抜けようとした際にサンルーフから顔を出していた小学生2人(いずれも8歳)が高さ制限を表示する鉄枠に激突し死亡した。当時の報道によれば、1学期の終業式で保護者の1人が小学生の友人同士3人を乗せていた際の悲劇だったという。
高架橋やガードがある場所でなくても、飛来物が衝突する可能性もあり、サンルーフからの乗り出しが危険な行為であることには変わりない。ドライバーにまで影響が出てハンドリングが乱れれば、多重事故という最悪の事態もありうる。
大人であれば絶対に慎まなければならず、子どもであってもドライバーや保護者が十分に配慮しておく必要がある。走行中に優先されるのは「楽しさ」ではなく「安全」だろう。