交通事故で負ったケガの通院中に、保険会社から「そろそろ症状固定にしませんか」と連絡がきたことはありませんか。
弁護士ドットコムにも「リハビリで良くなってきているのに…まだ早すぎる」「いつまでも治療費の支払いはできない、と毎週電話がくる」などの相談が多数寄せられています。「症状固定したら何がどうなるのかもわからない」という声もありました。
保険会社から言われたタイミングで症状固定していいのでしょうか。そもそも症状固定とは? 交通事故案件を多数扱ってきた平岡将人弁護士に聞きました。
●「症状固定」を突っぱね続ければいいわけでもない
——症状固定とは何でしょうか。
症状固定は、賠償の内容を区分けする法的概念です。
症状固定までの期間は、治療費、会社を休んだ場合の休業損害、入院通院慰謝料、通院のための交通費などが払われます。症状固定した後の治療費や休業損害は原則的には払われません。
十分な治療をしても症状が一進一退で、特に改善も見られなくなって、これ以上良くならない。そういう状態になったときを「症状固定」と呼びます。
——保険会社から勧められるケースがあるようですが、誰がいつ判断するのでしょうか。
これ以上治療を続けて効果があるか、新たな治療方法があるかという点は、ドクターの方針とも関わるので、最初に判断するのはドクターが多いですね。ただ、後から裁判所が法律的に症状固定でよかったかどうかを審査する場合もあります。
——症状固定にしなければ、治療費を払い続けてもらえるのでしょうか。
被害者からすると、症状固定にならない方が治療費を出してもらえるし、慰謝料も期間に応じて増え、休業損害ももらえる。メリットが大きいということもありますね。
保険会社側としては、症状固定かどうかの判断を先送りにして、治療費の支払いを一旦止め、「被害者が自腹で通院し、後から請求してください。その時に決めましょう」という対応をすることが多いです。
問題なのは症状固定までにケガが治っていない時ですが、「後遺障害」の申請があります。症状固定をしないと、この手続きは進められません。
後遺障害が認められるようなケースでは、症状固定にしてその後の申請を早く進めた方がスムーズに解決することもあります。
——後遺障害とはどのようなものでしょうか。
症状固定した後の損害賠償が、すなわち後遺障害に関する損害賠償です。後遺障害の損害賠償が割合的に大きいことも珍しくありません。
一番低い14級の後遺障害でも、全体の賠償額の3分の2くらいを占めることがあります。等級が上がるほど、後遺障害の損害賠償額の割合は大きくなります。
後遺障害の損害賠償はボリュームが大きいので、適正な等級で認定を受けることが重要になります。弁護士への相談を検討している場合には、症状固定より前に相談し、一緒に交渉をするという活動が大事だと思います。