元ビートルズのポール・マッカートニーさん(72)の東京ドーム公演のチケットを不正転売したとして、男性2人が4月下旬、東京都迷惑防止条例違反(ダフ屋行為)の疑いで警視庁に現行犯逮捕された。
報道によると、逮捕されたのは、東京都台東区の暴力団幹部(67)と兵庫県姫路市の歯科医師(46)。2人はポールさんの東京ドーム公演初日の4月23日夕、JR水道橋駅周辺で、50代の会社員男性に対して、定価1万8000円のチケットを8万円で転売した疑いが持たれている。
歯科医師が、知り合いだった暴力団幹部に余ったチケットの転売を依頼したところ、暴力団幹部が水道橋駅付近で声をかけた会社員男性を紹介したのだという。
一般的に、コンサートのチケットを買ったが、何らかの理由で行けなくなったとき、希望する人に譲りたいと考える人はいるのではないか。逆に、コンサートに行きたいが、公式のルートでチケットを入手できない人もいるだろう。そこには需要と供給の一致がある。
では、なぜ、チケットを転売する「ダフ屋」は違法とされているのだろうか。今回のポール・マッカートニーさんの来日公演を見てきたという作花知志弁護士に聞いた。
●ダフ屋と購入希望者には「力の差」がある
「ポールさんが歌う名曲の数々は、時代を超え、世代を超えて、愛され続けていることを改めて感じました。
法律家も、紙に書かれた活字である法律に、時代を超え、世代を超えて、支持される意味を与えることが仕事です。私もポールさんのような時代を超えて愛される『法律家』になりたいと思いました」
作花弁護士はこのようにコンサートの感想を述べる。なぜ「ダフ屋」は禁止されているのだろうか。
「もともと、『ダフ屋』が禁じられたのは、戦後の食糧難の時代でした。当時、食糧の配給チケットを買い占める人が現れ、その行為を放置すれば、餓死者が出るおそれがありました。
その後、経済成長時代を迎えると、むしろ『ダフ屋』の行為そのものの不良性(つきまとい・押し売りなど)が問題となり、地方自治体が条例で禁止するようになったのです」
今回の逮捕容疑も、東京都迷惑防止条例違反によるものだ。しかし、そもそも相手が「チケットをほしい」と言い、交渉が成立したのなら、問題ないのではないか。
「私の考えでは、『ダフ屋』行為の不良性に加えて、『ダフ屋』とチケット購入を希望する人との間には、事実上の力の差があります。その売買を完全に当事者の合意に委ねてしまうと、『ダフ屋』が暴利をむさぼることは容易に想像できるところです。
ですので、国や地方自治体が、本来なら私的自治であるべきところに介入して、チケット購入を希望する人を経済的に守ろうとしているのだと思います」
作花弁護士はこのように説明していた。