東京都八王子市で9月末、シカ・イノシシを捕獲するための「くくり罠」にツキノワグマがかかり、都内で初めて「緊急銃猟」によって駆除された。
これを受け、自然保護団体「日本熊森協会」(本部・兵庫県西宮市)は10月8日、小池百合子知事宛ての要望書を都環境局に提出した。クマの出没地域でのくくり罠の規制や、本来の捕獲対象ではない動物が罠にかかる「錯誤捕獲」が起きた際、クマを野生に戻す「放獣」の体制整備を求めている。
協会は翌10月9日、オンライン記者会見を開き、会長で弁護士の室谷悠子さんは「本来は放獣しなければいけないところ。経験に長けた人がいれば放獣ができたと思う」とうったえた。
八王子市の発表によると、市は9月28日、「市民の安全確保」を理由に緊急銃猟を実施し、クマ1頭を駆除した。
緊急銃猟は、一定の条件を満たせば、市町村長の判断で人の生活圏でも銃猟ができる制度だ。
●「恐れていたことが起こった」
室谷さんは会見で、鳥獣保護管理法上、許可された対象以外の動物を捕獲することはできないため、錯誤捕獲されたクマは放獣するのが原則だと説明した。
今回のクマについても「前から出没情報があったわけではなく、問題個体ではなかった」と指摘。安全に放獣できる専門家を確保する体制を整えるよう、都に求めた。
協会によると、今年5月末に八王子市内でクマが目撃された際、東京都支部と本部の職員が現地を調査したところ、出没場所の近くにくくり罠が設置されているのを発見した。
罠の設置を許可したのは都だったといい、協会側は八王子市役所と都の多摩環境事務所を訪れ、クマの生息地付近ではくくり罠を使わないよう申し入れた。しかし、「難しい」との返答だったという。
こうした経緯もあり、室谷さんは今回の錯誤捕獲について「恐れていたことが起こった」と語った。
都の資料によると、都内では2012年以降、ツキノワグマの錯誤捕獲が4件発生。2019年には奥多摩町でくくり罠に足の指だけがかかった個体が殺処分されている。
●「12センチ」の運用が「根本的な問題」
くくり罠には、クマなどの錯誤捕獲を防ぐため、環境省令で輪の直径を12センチ以内とする基準がある。
しかし、室谷さんは、環境省が通知によって「最も短い部分が12センチ」であればよいとする運用を認めた結果、大きな動物の足も入りやすい楕円形の罠が使われていることが「根本的な問題」だと指摘した。
協会は都に対し、クマの出没地域ではくくり罠の設置を許可せず、やむを得ず使用する場合も、輪の形を真円とし、直径を12センチ以下に制限するよう求めた。
室谷さんは、くくり罠によって動物が足を切断することもあるとして、「かなり残酷な罠」と批判。将来的には別の捕獲方法に切り替え、廃止を目指すべきだとした。
実際に八王子市小津町の現場を訪れた協会職員も、罠の設置場所に危険を感じたという。
「気づかないで歩いていたら、すぐ隣にくくり罠が置いてあって、危うく踏むところだった。人が入りやすいところに罠があるのは危ない」
●「捕殺だけに頼らない共存のモデルを」
東京都は現在、2027年4月から5年間を対象とする「第1期ツキノワグマ管理計画」の中間のまとめについて、10月14日まで意見を募集している。
計画案では、都内のツキノワグマの推定生息数を平均235頭とし、年間捕獲数の目安を34頭に設定。2008年度から続けてきたクマの狩猟禁止を2027年4月に解除するとしている。
協会は10月8日、都環境局の担当課にも意見書を提出。推定生息数が過大評価されている可能性があるとして、捕獲数の目安の設定や狩猟再開について、慎重な検討を求めた。
一方、室谷さんは「捕獲自体を全部否定はしないし、問題個体の捕獲が必要な場合もある」とも説明。東京都に対して次のように呼びかけた。
「東京は財政的なゆとりも人材もある。捕殺だけに頼らない共存のモデルを東京で作ってほしい」
また、協会東京都支部長の西岡初見さんは、首都・東京に野生のクマが生息していることの意義を強調した。
「ロンドンにもパリにもワシントンDCなどの名だたる首都にもいないクマが、この東京にいる。1400万人が暮らすこの国の首都に野生のクマが住んでいることは東京の矜持だと思う」
西岡さんはまた「その誇りを次の世代に余すことなく手渡すため、できることを無理なく実践していきたい」と語った。