着たい水着をプールで着られないのがつらいーー。夏になると、そんな悩みが弁護士ドットコムに寄せられます。
ある相談者は、Tバックの水着を着用したいが、プールによっては注意されることがあったり、禁止されていたりすることに悩んでいるといいます。また、別の相談者は、市民プールで男性だけど女性用のスクール水着を着て泳ぎたいと考えているそうです。
プールの利用者がどんな水着を着るのかは自由ではないのでしょうか。この問題は、実は非常に難しい問題でもあります。
●プール側には「施設管理権」がある
プールを管理する側には、施設の秩序を保つために利用のルールを決める権限があります。「施設管理権」と呼ばれるものです。
運営に支障が出たり、ほかの利用者の迷惑になったりする服装は、この権限にもとづいて制限できます。
民間のプールなら、いわば「お店が決めたルール」の問題です。安全や衛生が目的なら、制限は正当化されやすいでしょう。
ただ、どんな理由でもよいわけではありません。たとえば、外国人であることだけを理由に、客を一律に断った事業者の対応を違法とした裁判例もあります。
●市営プールでは、断るハードルが上がる
市営プールは、住民のために設けられた「公の施設」です。正当な理由がなければ、住民の利用を拒んではならないとされています(地方自治法244条2項)。不当な差別的取扱いも禁止されています(同条3項)。市が運営を民間の会社に任せている場合も、同じ決まりが及びます。
「正当な理由」があるかどうかは、管理者の好みではなく、施設の目的や使われ方に照らして判断されます。
安全や衛生のために、条例や利用規則で服装の基準を決めておくことは、認められやすいと考えられます。逆に、管理者がその場の感覚だけで断るのは難しいでしょう。
●着たい水着を着る自由はあるのか
どの水着を着るかは、基本的には自由ですし、その判断は尊重されるべきでしょう。また、その人の性自認と分かちがたく結びついていることもあります。
プールは、水着を着た男女が同じ水面を使う場所です。着ている水着の種類だけを理由に利用を断ることには、慎重な判断が求められるでしょう。
ただ、たとえば身体的性別が男性で性自認が女性の方の場合、などを考えると、女性用の水着は下半身の切れ込みが大きいものもあり、見え方によって制限が及ぶ場面はありえるでしょう。
また、更衣室やシャワーなど、男女で分かれたスペースの使い方の問題はまた別の考慮が必要になります。公衆浴場については、身体的な特徴で判断するという考え方が国から示されており、プールでも参考にされるでしょう。
●行く前に、ルールを確かめておく
好きな水着でプールに行きたいときは、事前に利用規約や、市営なら条例・規則を確認しておくのが現実的です。
断られたときも理由を聞いてみると、「上着を羽織ればOK」といった折り合いがつくこともあります。
着たいものを着られるかどうかは、本人には小さな問題ではありません。だからこそ、先に確かめておくのが確実です。
小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)