大阪地検トップの検事正だった北川健太郎氏から性被害を受けたと訴えている現職の女性検事が3月2日、同様の問題の再発防止を求めて、第三者委員会による調査を実施するよう求める要望書を法務大臣と検事総長に宛てて提出した。
あわせて、職員のハラスメント被害に適切に対応しなかったなどとして、検事総長を含む検察幹部ら15人について、公務員職権濫用罪や証拠隠滅罪などの疑いで告訴・告発した。
女性検事は、東京・霞が関で開いた記者会見で「私は検事なので、犯罪を見過ごすわけにはいきません。要望した事項を3月31日までに実行しなければ、私は辞職します」と述べた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●第三者による検証を再三求めるも応じず
北川氏は大阪地検のトップである検事正だった2018年9月、当時住んでいた大阪市の官舎で、部下のAさんに性的暴行を加えたとされる。
Aさんは事件から5年半が経った2024年春に被害を申告。北川氏は同年6月、準強制性交の疑いで逮捕され、その後、起訴された。
2024年10月に大阪地裁で開かれた初公判で、北川氏は起訴内容を認めたが、その後、無罪主張に転じた。
Aさんによると、被害を申告した後、女性に関する事実無根のうわさが庁内で広まるなどしたが、検察庁は十分な対応をとらなかったという。
そのためAさんは、これまで複数回にわたり記者会見を開き、第三者委員会による検証を求めてきたが、動きはない。
大阪地検トップによる性犯罪事件の経緯(弁護士ドットコムニュース作成)
●女性「検事として最後にやるべきこと」
Aさんは3月2日、要望書と告発状を提出した後に記者会見を開き、「私はもう(検察庁に)戻れませんが、ハラスメントをなくしたい、現場の職員が私と同じ目に遭わないようにと思い、職をとして要望しました」と語った。
検察幹部らを告発したことについては、次のように述べた。
「検事総長らの処罰を求める現職の検事は頭がおかしいと思われるかもしれません。しかし、私は検事なので、犯罪を見過ごすわけにはいきません。検事総長らの罪を告発することが、私が検事として最後にやるべきことだと思います」
記者会見で検察庁の問題を指摘する田中嘉寿子弁護士(左)ら(2026年3月2日/東京・霞が関の司法記者クラブで/弁護士ドットコム撮影)
●元検事「検察庁はこのままではいられない」
Aさんは、副検事の女性が、内偵捜査の対象となっていた北川氏に捜査情報を伝えた疑いがあることや、検察幹部から事件に関して公での発言を控えるよう求められたことなども問題視している。
こうした二次的被害があったとして、今年2月、北川氏や副検事の女性、検察幹部、国などを相手取り、計約8321万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。
記者会見では、検察官が起訴するかどうかの権限を独占しており、検察庁内部で問題が生じた場合に検察を捜査する組織がないため、自浄作用を期待するしかない現状について質問があった。
これに対して、Aさんの代理人をつとめる田中嘉寿子弁護士は次のように答えた。
「検察庁は民間企業のように外部の株主からものを言われることがないが、この事件を通して、いつまでもそのままではいられないだろうなと感じています。一番簡単なのが第三者調査委員会を設置することです」