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ボクシング2選手死亡で「水抜き」禁止へ 相次ぐ死亡事故で問われる主催者の法的責任
画像はイメージです(Nekokamera / PIXTA)

ボクシング2選手死亡で「水抜き」禁止へ 相次ぐ死亡事故で問われる主催者の法的責任

プロボクシングの公式戦で、8月2日に行われた試合の後、2人の選手が相次いで亡くなったことを受け、日本ボクシングコミッション(JBC)などが「水抜き」と呼ばれる減量方法につき、新ルールを導入する方針を固めました。

「水抜き」とは、簡単にいえば試合前の計量で規定体重をクリアするために、計量前に体内の水分を一時的に大きく減らし、計量後に水分や栄養を補給して元の体重に戻す手法です。

試合前日の計量から体重が急増(10%以上増加)した選手には階級変更を義務づけるそうです。なぜ「水抜き」に焦点が当てられたのか。危険を承知で挑む競技において、主催者にはどこまで安全確保の責任があるのか。法的な意味について検討します。

●死なせてしまった選手はなぜ、法的責任を問われない?

ボクシングで選手が亡くなると、「相手を死なせてしまった選手に法的問題はないの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。

この疑問への答えですが、ルールに則って競技を行った結果(※つまり反則行為などは除きます)、死亡事故が発生したとしても選手は責任を問われません。

まず刑事上は、正当業務行為として違法性が阻却されます(刑法35条)。

民事上も、通常の競技の中で生じた事故については、不法行為責任(民法709条)を問えないと考えられています。

●危険な状況を放置すれば運営側の法的責任を問われる可能性も

では、主催者には責任がないのでしょうか?

度重なる死亡事故に対し、何らの安全対策も講じなければ、主催者側が法的責任を問われる可能性はあります。

たとえば刑事上は、業務上過失致死罪(刑法211条)が成立する可能性があります。

民事上も、不法行為として損害賠償責任が生じる可能性があります。

2選手が死亡した後、試合を管理、運営する日本ボクシングコミッション(JBC)と日本プロボクシング協会は「水抜き禁止」を含め、医療体制の充実など対応策を協議し始めたのも、そのような責任に基づいてのものと考えられます。

●「水抜き」に関するルール変更

NHKの報道(8月12日)によれば、「事故の要因を特定することは難しい」としたうえで、日本プロボクシング協会の小林昭司会長は「なんとか事故をなくせるような方法と体制を作っていきたい」と述べています。

2選手の死亡原因がわからない中で、なぜ「水抜き」に関するルールを変更したのでしょうか。

考えられるのは、計量時と実際の試合時に大きな体重差があると、選手間の打撃力に差が出すぎてしまい、危険性が高まる点があげられます。

たとえば男子の「バンタム級」(52.17kg〜53.52kgまで)の選手が、計量に合格した翌日の試合時に10%体重が増えたとすると、57.387kg〜58.872kgになります。

この体重は、3階級上の「スーパーフェザー級」(57.16kg〜58.97kgまで)に相当します。

1階級違うだけでもパンチの重さが全く異なるといわれていることを考えれば、この差はたいへん大きく、非常に危険といえます。

画像タイトル プロボクシングの男子階級表(日本ボクシングコミッション公式HPより)

「水抜き禁止」だけで死亡事故が防げるわけではありません。しかし、選手たちの命を守るための第一歩となるでしょう。リング上の安全確保に終わりはなく、今後も主催者側には、倫理的、法的な責任に基づいた不断の努力が求められます。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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