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巨大法律事務所に“原子力ムラ化”の影…脱原発貫く弁護士の憂い「優秀な奴らが金脈を見つけた結果だ」
都内で講演した後藤秀典氏(右)と河合弘之弁護士(2024年2月11日、弁護士ドットコム撮影)

巨大法律事務所に“原子力ムラ化”の影…脱原発貫く弁護士の憂い「優秀な奴らが金脈を見つけた結果だ」

東京電力福島第一原発事故から、まもなく13年。これまで、事故や全国の原発をめぐる多くの訴訟が展開されてきた。

取材するジャーナリスト後藤秀典氏によると、訴訟が増えるのと時を同じくして、4大と言われる法律事務所が台頭。その後、5つ目のローファームとして急速に存在感を増したTMI総合法律事務所を含め3つの事務所が国や東電側の代理人を務める弁護士を多く抱えているという。

後藤氏の調べではTMIには元原子力規制庁職員が入所、西村あさひ法律事務所の共同経営者は東電の社外取締役に、長島・大野・常松法律事務所には退官後の最高裁判事が顧問に就任するなど「国も最高裁もべったり」(後藤氏)という。

1990年代から数々の脱原発訴訟に携わってきた河合弘之弁護士は「電力会社は金に糸目をつけないから受任すれば儲かる。原発訴訟が一つのマーケットになってしまった」と指摘する。

●河合弁護士「『原発訴訟は儲かる』となってしまった」

後藤氏が今年2月11日、東京都内で「大手法律事務所に支配される最高裁!東電刑事裁判で改めて問われる司法の独立」と題して講演し、公正さを求められる最高裁判事も巨大事務所と関係が深いという実情を報告した。

会場で発言した「脱原発弁護団全国連絡会」の共同代表でもある河合弁護士は、大企業の顧問としてビジネスの世界を生き抜いてきた経験の持ち主。「企業法務と人権派、両方のことがわかる」(河合弁護士)立場から見てきて、巨大法律事務所が電力会社などの代理人につくようになったのは3・11以降だという。

「3・11までの電力側の代理人はマニアックで、職人的な界隈だった。しかし、訴訟が増えるにつれ、『原発訴訟は儲かる』マーケットになってしまった。巨大事務所は大量に優秀な若い人を採用する。電力会社の技術者からちょっと教えられればできるんです」

画像タイトル 最高裁と大手法律事務所・東電をめぐる人脈図(敬称略、後藤秀典氏『東京電力の変節 最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃』より抜粋)

●弁護団ら、公正な裁判を求める署名を展開

後藤氏や弁護団が最も疑問視しているのが、最高裁第二小法廷の草野耕一判事が西村あさひの元代表経営者だということだ。同事務所共同経営者の新川麻氏は現在も東電の社外取締役を務め、顧問の千葉勝美氏は元最高裁判事として、東電側の意見書を提出している。

この第二小法廷が東電旧経営陣3人の刑事裁判を担当している。弁護団らは「裁判官は独立して中立・公正な立場に立つことはもちろん、外見上も中立・公正であることを求められている」として、草野耕一氏に審理から自ら身を引く「回避」を決断するよう要求。1月末には4500筆超の署名を出しており、2月28日までの集計分を3月8日に追加提出する(署名はこちら)。

この刑事裁判は、勝俣恒久元会長らを業務上過失致死傷の罪に問うており、佳境を迎えている。一審・二審では全員無罪、検察官役の指定弁護士が最高裁に上告中だ。高裁判決から1年以上たち、弁護団は「口頭弁論を開き、高裁判決を破棄するよう求める署名」も展開している。

河合弁護士は「最高裁の裁判官は、これまで国に親和的なエリートが選ばれてきた。しかし、原子力ムラにどっぷりの弁護士が登用されるという形に切り替わっている」と指摘し、市民による監視が不可欠だと強調した。

「3・11のような事故はもう絶対に起こさせない。ワーワー言い続け、緊張させること。あの手この手で牽制しなければなりません。(最高裁判事のような)上澄みで生きてきた人は名指しされることに慣れていない。遠慮なく声を上げていくべきです」(河合弁護士)

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