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「侮辱ヤフコメ」投稿者に賠償命令…刑事では不起訴に「この程度で問題になるのはおかしい」
名古屋地裁(天空のジュピター / PIXTA)

「侮辱ヤフコメ」投稿者に賠償命令…刑事では不起訴に「この程度で問題になるのはおかしい」

トヨタ自動車グループの「愛知製鋼」の技術情報漏洩事件で無罪が確定した元専務・本藏(ほんくら)義信さんが、ヤフーニュース配信記事のコメント欄に「バカボン」などと書いた投稿者に約200万円の賠償をもとめた訴訟で、名古屋地裁は93万5000円の賠償を命じる判決を言い渡した(3月30日付)。

ヤフコメを投稿した事実は争われず、賠償額が争点となっていた。

30万円が慰謝料で、残りは投稿者の特定にかかった費用。本藏さん側は「『侮辱』行為について30万円の慰謝料とともに、開示費用が満額認められたことは、今後の同種事案の予防にもなりえる」(本藏さんが代表をつとめる会社のインハウスロイヤー・井上健人弁護士)と評価した。

賠償金と遅延損害金を含め、4月11日付けで支払いが済んでいるという。

●刑事で不起訴になるや…「この程度で問題になるのはおかしい」

本藏さんは不正競争防止法違反の罪に問われ、2017年に逮捕・起訴されたが、2022年3月18日、名古屋地裁で無罪となった(判決は確定)。無罪判決を受けて本人が記者会見した様子を報じるネット記事に、今回問題となったヤフコメが投稿された。

〈バカボン〉
〈どれだけ人を踏み台にして上がっていったか、自分自身が知ってるだろう。上告。〉

判決文によれば、名古屋地裁の赤谷圭介裁判官は、こうした投稿が、「バカボン」という表現で本藏さんを揶揄したうえで、金銭目的で犯罪に及んだことを前提とし、不当な手段で愛知製鋼の役員の地位を得たなどと侮辱する内容と認めた。

さらに、長年にわたって無罪判決を得るために裁判を争ってきた本藏さんがヤフコメで受けた精神的苦痛などを総合的に考慮して、慰謝料は30万円が相当とされた。

一方で、昨年10月の提訴とあわせて、愛知県警に刑事告訴したが、同年12月27日に不起訴(起訴猶予)とされたという。

それ以降、被告の男性が「この程度で問題になるのはおかしい」という態度を示し始め、本藏さんへの謝罪は最後までなかったそうだ。こうしたこともあり、不起訴処分は「残念だ」と話す。

●ヤフコメ投稿の動機は解明されたのか

被告側は、訴訟を通じて「在籍中、本蔵氏の率いる新事業が優遇され、面白くなかった。嫌な感情を持っていた」「愛知製鋼に頑張ってほしいとの思い」などと主張したという。

しかし、本藏さんとしては「愛知製鋼を退職したのは、待遇に不満があったからとしている男性が『愛知製鋼に頑張ってほしい』というのも不自然に感じる」として言い分をそのまま受け取ることもできていない。

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