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朝倉未来さん母が敗訴…ノーアポ取材&顔写真掲載でも「肖像権侵害」認められず
東京地裁

朝倉未来さん母が敗訴…ノーアポ取材&顔写真掲載でも「肖像権侵害」認められず

格闘家でYouTuberの朝倉未来さんの母親が、無断で撮影された写真を記事にされたのは肖像権侵害にあたるとして、「Smart FLASH」を運営する光文社と記者に慰謝料など110万円と写真の削除をもとめていた裁判で、東京地裁は1月24日、請求を棄却する判決を言い渡した。

裁判の争点は、「有名人の家族への取材」がどの程度まで許されるのか。野村武範裁判長は「当然に許される行為とまでは言えないものの、社会通念上の受忍限度を超えるとまではいえない」と判断した。

●母親が「直撃取材」を受けるに至った経緯

2021年11月のストリートファイト企画で朝倉未来さんが対戦相手にケガをさせて話題となっていたことから、「Smart FLASH」は企画内容や未来さんの女性関係について聞くため、仕事帰りの母親をアポなしで直撃取材し、実名と顔写真入りのネット記事を同年12月1日に公開している。

母親は取材に軽い相槌や「何も言えません」と対応するにとどめ、具体的な回答をしていない。

未来さんはTwitterや動画で、「一般人」の母親への取材手法や記事掲載を問題視し、法的措置をとる考えを示し、母親は翌年2月に裁判を起こしていた。

判決文によると、こうした取材・撮影や記事掲載は、母親にとってはまったく予期しないもので困惑させるものであり、未来さんにとっても受け入れがたいものだろうとし「当然に許される行為であるということはできない」と指摘している。

その一方で、下記に示すような事情から「母親にとって、社会生活上受忍の限度を超えた人格的利益の侵害が生じたということはできない」として肖像権侵害は認められないとの考えを示した。

・母親が完全な一般私人であるとは言いがたい
・撮影は公道上における取材・撮影行為と格段に違いがない
・取材目的やそれを踏まえた取材方法の選択として不合理なものとは言えない
・撮影の目的や必要性が報道の正確性を期すためにあると否定できない
・隠し撮りのような不意打ち的な方法とは言えない

民間で働き、芸能活動をしているわけでもない母親を「完全な一般私人であるとは言いがたい」とした理由について、判決はこのように考えている。

著名な未来さんと弟の海さんのYouTubeチャンネルに少なくとも5回出演し(再生回数計1400万回超)、自身もインスタグラム(フォロワー数1万4000人・22年4月当時)で自身の容ぼうを広く公開していたことからすると、公人や公人に準ずる立場とまでは言えないものの、完全な一般私人とまでは言いがたいというものだ。

●写真がなくても成立した? 「正確性を期すためには必要という側面も」

なお、原告側は、母親のコメントだけでも記事の目的は成立するのであって、顔などを載せる必要性はないと主張。記事タイトルに「噂の“美魔女母親”●●さん(編注:実際には実名)」との記載があることからすれば、撮影は公益目的ではなく、記事の訴求力を高める営利目的だったなどと指摘していた。

判決も「訴求力を高めるための撮影・掲載の可能性は否定できない」としたが、それでも母親のコメントを写真とともに報じることは、「記事の内容が、取材時の母親の発言内容であることを担保し、報道の正確性を期すために必要なものだったという側面があることは否定できない」としている。

●光文社「主張が概ね認められた」

判決を受けて、光文社広報室は弁護士ドットコムニュースの取材に「当方の主張が概ね認められたことと理解しています」とコメントした。母親側には代理人弁護士を通じて見解を求めている。

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