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加熱式タバコの「歩きタバコ」が不快、なぜ自治体によってはOKなのか
写真はイメージです(sasaki106 / PIXTA)

加熱式タバコの「歩きタバコ」が不快、なぜ自治体によってはOKなのか

「なんか臭いぞ。歩きタバコじゃないのか」。東京都の会社員シンヤさんは、東京・港区の路上で、前を歩いている会社員の男性から、ぷーんと漂ってくる臭さに耐えられなくて、憤った。

その男性の手元をよく見ると加熱式タバコだった。加熱式タバコであったとしても、歩きタバコは法的にNGだと思っていたので、調べてみると、東京・港区は今年の10月から規制対象になっていた。

ただ、港区が9月までOKだったということなら、今でもOKな自治体は他にありそうだ。例えば、千葉市のサイトをみてみると、加熱式タバコは規制の対象外とある。

加熱式タバコの「歩きタバコ」の扱いについて、なぜ各自治体で差が出てしまうのか。岡本光樹弁護士に聞いた。

●条例の目的が何かによって、結論が異なる

加熱式タバコが一般に普及したのは、2016年4月にテレビ番組で取り上げられて以後です。

加熱式タバコが、「健康増進法」上、燃焼させるタバコと区別されたのは2018年7月の改正からであり、また「たばこ税法」上、「加熱式たばこ」の区分が新設されたのは2018年10月施行からです。

これら以前に制定された条例では、加熱式タバコの存在を具体的に念頭に置いていませんでした。その後、加熱式タバコを路上喫煙や歩きタバコとして規制対象に含めるのか含めないのかについて、既存条例の解釈又は条例の改正・新設などにおいて、自治体の対応が分かれました。

条例の目的が何かによって、結論が異なってきます。

①環境美化、ポイ捨て防止
②火傷や火災等の被害防止
③屋外の受動喫煙防止

主に上記3つの目的が考えられ、どれに重点をおいた条例なのかは自治体によって異なります。

①が目的の場合、加熱式タバコもポイ捨ては起きているので、規制対象にすべきと考えられるでしょう。②が目的の場合、加熱式タバコの路上喫煙で火傷や火災等は起こりにくいので、規制対象にしないと考えられるでしょう。

③については、前述の健康増進法改正により、屋外での加熱式タバコ使用も「望まない受動喫煙(蒸気を含む)を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない」という配慮義務が導入されました(同法27条・28条)。

これを踏まえて、③屋外の受動喫煙防止を条例の目的に位置付ける自治体も増えています。③の観点で、加熱式タバコに罰則をかけるかどうかは、自治体によって判断が分かれていると思われます。

条例の目的(①②③)、手段(罰則の有無、標識・啓発の方法など)、政治的な判断(首長・議会)などが異なる結果、各地の条例及び規制状況が多様なものになっています。

プロフィール

岡本 光樹
岡本 光樹(おかもと こうき)弁護士 岡本総合法律事務所
1982年岡山県生まれ。05年東大法卒、06年弁護士登録。国内最大手の法律事務所などを経て、11年に独立。企業法務や労働案件、受動喫煙に関する係争・訴訟、家事事件などを幅広く扱う。第二東京弁護士会で人権擁護委・副委員長や受動喫煙防止部会長などを務める。2017年から2021年7月まで東京都議会議員。

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