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「あまりにもひどい」ラーメン屋で「弁当」食べる客に店主激怒 持ち込み禁止にできる?
画像はイメージです(CHAI、tojiko(=弁当) / PIXTA)

「あまりにもひどい」ラーメン屋で「弁当」食べる客に店主激怒 持ち込み禁止にできる?

ラーメン店の客が、その場で持ち込んだ弁当を食べたうえ、注文したラーメンを残していった——。そんなラーメン店主のツイートが話題になっている。

店主は、同投稿で「僕は毎日一生懸命ラーメン作っています。真剣に食べたけど無理だったら何も言いません。あまりにもひどすぎます」と続け、憤懣やるかたない思いを吐露した。

もう同じ思いをしたくないのだろう。「今後、持ち込みは『調味料・レンゲ・ドリンク』のみとさせていただきます」とし、以後の食べ物持ち込みを禁止する旨を明らかにした。

このツイートに対しては、「そもそも飲食店は基本持ち込み禁止では」「常識では考えられない行為」「お店に失礼」など店主の考えを支持する意見がほとんどだった。また、このラーメン店がかつて名を連ねていたグループでは「持ち込み可」だから今回の店でも大丈夫だと思ったのではないかと推測する見方もあがっていた。

J-CASTニュース(10月25日)によると、店主は「食べたゴミを当店のゴミ箱に捨て店を出たため注意した」という。店を出るときに注意したため、ラーメンを頼んだにもかかわらず店内で弁当を食べていた理由を聞く時間がなかったようだ。なお、買い物帰りの場合を考慮し、弁当の持ち込み自体を禁止しているわけではないという。

ほとんどの飲食店では注文した品以外を飲食しないよう客に求めていると思われるが、一方で店のルールとして張り紙などで明示まではしていないところもありそうだ。そのような場合、店側は客に対してどのような対応をすることができるのだろうか。大橋賢也弁護士に聞いた。

●店側には「施設管理権」がある

——飲食店が客に注文した品以外を飲食しないよう求めることは法的に可能ですか。

飲食店その他の店舗の管理者には、「施設管理権」というものがあります。施設管理権とは、施設の管理者が、当該施設を包括的に管理する権利権限のことをいいます。

そのため、飲食店の店主が、客に対し、店外から持ち込んだものを店内で飲食しないように求める、あるいはそのことをルールとして定めることは、施設管理権の行使として、当然に認められます。

最近では、マスクを着用していない方の入店お断りを掲げている店舗も多いですが、これも施設管理権行使の一つといえます。

——ルールとして定めている場合、あらかじめ客側に明示していないといけないのでしょうか。

一般論としては、トラブル防止の観点から、施設管理権の内容は、ホームページ等において明示することが望ましいと考えます。たとえば、大勢の観客が観戦するプロスポーツなどでは、規約や規程等で禁止行為を明記しています。

もっとも、すべての施設管理者が、施設管理権の内容を対外的に明示しているわけではありません。小さな飲食店などでは、仮に施設管理権に基づくルールを作っていたとしても、客に明示しているところは少ないのではないでしょうか。

そこで、一般的な飲食店では、当該ルールの内容が特殊なものであり、不意打ち防止の観点から客に明示しておく必要があると思われる例外的なもの以外は、あえて対外的に明示する必要はないと思います。

●「持ち込みNG」は明示する必要がないくらい当然のルール

——注文した品以外を飲食しないよう求めるルールについてはどうでしょうか。

ラーメン店のような飲食店で、店内で食べるための物を持ち込まないというのは当然のことなので、あえて客に明示する必要まではないと思います。

これに対し、マスクを着用していない人の入店を断るような場合は、その旨を客に明示しておくべきでしょう。また、持ち込みを許容する場合も、同じように明示しておくべきだと考えます。

——ルールとして決めていない場合でも、注文した品以外を飲食しないよう客に求めることは可能なのでしょうか。

たとえ事前にルールを決めていなかったり、決めてはいたものの客側に示していなかった場合でも、客が、持ち込んだ弁当を食べ始めたら、施設管理権に基づきそれをやめるよう求めることができます。

このことは、飲食店が、食べ物を作って客に出すだけではなく、他の客が居心地良く飲食する場を提供するところであるという、その場の性質にも合致します。

——やめるよう求めても拒否された場合、どのような対応が可能なのでしょうか。

客が、施設管理者の要求を拒否した場合、施設管理者は、施設管理権に基づき、客に退店を求めることもできます。

●「飲食店に行く以上、そこで出されたものを飲食し、楽しもう」

——客側が店から提供された飲食物にほとんど手を付けていない段階で、持ち込んだ飲食物の飲食が発覚し、退店してもらうことになった場合、飲食代はどうなるのでしょうか。

店は、注文された品を提供したわけですから、法律的には、売買契約に基づき代金を請求することができます。

もっとも、実際には、客に退店してもらうためには、強行に退店させるのではなく、客と話し合い、客に納得してもらうことの方が多いのではないでしょうか。

したがって、施設管理者は、代金は請求しない代わりに、退店してもらうというように話をまとめることが多いように思われます。

——客側が何らかの理由で、「持ち込みOK」だと勘違いしていた場合、どういった対応になることが考えられますか。

施設管理者は、このような場合も、客に持ち込み不可だということを説明し、納得してもらうことが大切です。

なお、客が「持ち込みOK」だと勘違いしていたとして、錯誤に基づき売買契約を取り消して飲食代を支払わないと主張してきたとしても、このような主張は認められにくいと考えます。

——今回のようなトラブルを防ぐために、あらかじめ店側としてはどのような対策をとっておくと良いのでしょうか。

一般的には、飲食店では外から持ち込んだ物を食べないという暗黙のルールがあるでしょうから、あえて「飲食物持ち込み禁止」というルールを設けて、客に明示するといった対応を取っている飲食店はそれほど多いとは思えません。

しかし、トラブルを未然に防止するために、店内やホームページ等に「飲食物持ち込み禁止」と明示することも考えられます。特に、今回のラーメン店のように、全面的に持ち込みを禁止するのではなく、「調味料・レンゲ・ドリンク」のみ持込可とするのであれば、このことを客に告知しておいた方が良いと思います。

前述のように、飲食店の店主は、施設管理権に基づき、店内で食べるものの持ち込みを禁止することができ、これに従わない客に退店を求めることができます。

もっとも、このような当たり前のことまで、トラブルを防止するために明示する必要があるのかという疑問もあります。飲食店に行く以上、そこで出されたものを飲食し、楽しむ(逆にいうと、店内で食べるものを外から持ち込まない)ということが、社会共通のルールであると、多くの人が考えられる社会であれば良いなと個人的には思います。

プロフィール

大橋 賢也
大橋 賢也(おおはし けんや)弁護士 川崎エスト法律事務所
神奈川県立湘南高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。平成18年弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。離婚、相続、成年後見、債務整理、交通事故等、幅広い案件を扱う。一人一人の心に寄り添う頼れるパートナーを目指して、川崎エスト法律事務所を開設。趣味はマラソン。

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