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夏休み、もう消えた…コロナで「ゼロ宣言」の自治体も 制度上は問題なし
今年はこんな風に過ごせないかもしれない(Fast&Slow / PIXTA)

夏休み、もう消えた…コロナで「ゼロ宣言」の自治体も 制度上は問題なし

新型コロナウイルス感染拡大により、休校期間が長引いている。来年からの「9月入学・始業」の議論もあるが、自治体によっては、「夏休み」を減らして、授業の遅れを取り戻すことを検討しているようだ。

兵庫県小野市は4月、市立の小中学校について「夏休みゼロ宣言」を発表し、休校が長引いた場合は7〜8月の平日(盆休みを除く)に授業を行う方針を明らかにした。

蓬莱務市長は、早い時期に宣言した理由について、「夏休みに授業を行う覚悟を生徒や保護者に共有してもらうため」と説明。その上で、学校再開が早まれば、「夏休みゼロ」の回避など柔軟に対応するとしている。

「夏休みゼロ」とまでいかずとも、夏休みの短縮を決定あるいは検討している自治体は少なくない。

福岡市は、市立の学校の夏休みを短縮し、土曜授業も増やす方針を発表。千葉県は、県立学校の夏休みを11日間短縮すると発表し、市町村立の学校にも同様の対応を取るよう促したという。

●「夏休み」はどうやって決められているのか?

そもそも夏休みの期間はどのように決められているのか。実は、首長(知事・市長など)が決定できるわけではない。

公立の小中学校・高校の夏休みについては原則として「市町村または都道府県の教育委員会」が定めており(学校教育法施行令29条1項)、私立では「学則」で定めることになっている。大学は、学則や通則などで定めている。

たとえば、小野市の小中学校については、小野市教育委員会が定める「小野市立小学校、中学校及び特別支援学校の管理運営に関する規則」において、7月21日から8月31日までと決められている(3条1項4号)。

●制度上、「夏休み」はゼロでも問題ない

では、教育委員会で定めることができるからといって、「夏休みゼロ」は可能なのか。

文科省の担当者は、取材に対し、「夏休みをゼロにすることは問題ない」と言う。

「寒冷な地域の学校は期間が短いなど、一律に決まっているものではない。法令上、『夏季休業(夏休み)は●●日設けなければならない』ともなっておらず、各教育委員会や学校法人等の判断で定めることができる」(文科省)

夏休みを楽しみにしている生徒にとっては、なかなか無慈悲な話だ。

●猛暑の中の授業、大丈夫か?

近年、7〜8月の気温は35度を超えることも珍しくない。

前述の小野市は、「小中学校の全教室に冷房設備を設置している」としており、その限りでは猛暑の中で授業を行う心配は必要ないかもしれない。

しかし、文科省の資料によれば、公立学校の普通教室における冷房設備の設置率(2019年9月時点)は「78.4%」であり、全ての学校に冷房設備が設置されているわけではない。

冷房設備なしでの授業は、生徒だけでなく、教職員にとっても過酷で、熱中症など健康への被害が懸念される。

また、冷房設備があればあったで、別の懸念も出てくる。

冷房の効いた教室は、より「3密(密閉空間、密集場所、密接場面)」になりやすい。7〜8月までに新型コロナに感染するリスクが十分に解消されていない場合、新たなクラスターを発生させるおそれも考えられる。

夏休みの期間に授業を行うには、環境面での課題が残されていそうだ。

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