弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 税務訴訟
  3. 懸賞で550万円の「新車」が当たった! 税金は「いつ、どうやって」納めればいい?
懸賞で550万円の「新車」が当たった! 税金は「いつ、どうやって」納めればいい?
写真はイメージ

懸賞で550万円の「新車」が当たった! 税金は「いつ、どうやって」納めればいい?

懸賞で「新車」が当たった――。そんな幸運の持ち主から、当たった車の税金の手続きについて、税理士ドットコムに相談が寄せられた。

投稿者は、懸賞で税込550万円の新車が当選し、とても喜んでいたそうだ。ところが、改めて、応募要項を確認してみると、「当選の際にかかる源泉所得税は当選者様本人の負担となります。商品受け取り後、確定申告を当選者本人の責任において申告してください」という文面を発見。どのように申告したらよいのかわからず、「いつ、どうやって、いくら払えばいいのでしょうか?」と途方に暮れている。

懸賞で「賞品」が当たった場合、税金を払わないといけないのか。もしそうだとしたら、手続はどうなっているのだろうか。阿久根寛宜税理士に聞いた。

●懸賞の賞品は「一時所得」

「懸賞や福引きなどで賞金や賞品が当たった場合は、所得税法上の『一時所得』として課税されます。

広告宣伝のための賞金や賞品の場合、企業が賞品を当選者に渡した月の翌月10日までに源泉所得税を払うことになります。そのため、当選者は、企業から、賞品を受け取る際に源泉所得税の金額の負担を求められることになるでしょう」

阿久根税理士はこのように述べる。具体的には、どんな手続が必要なのだろう。

「投稿者が行う必要がある手続は、次の2点です。

(1)賞品にかかる源泉所得税分を企業に支払う、

(2)確定申告をして、一時所得を申告する(翌年2月16日から3月15日まで)。

源泉所得税として、具体的に支払うべき納付税額は、賞品の通常販売価額の6割から50万円を引いて、10.21%をかけた額です。

今回のケースでは、(550万円×60%-50万円)×10.21%=28万5880円となります」

●給与など他の所得と合わせて課税

「一時所得として課税の対象となるのは、『一時所得の金額』の2分の1の額です。『一時所得の金額』は以下の算式により計算されます。

一時所得の金額 = 収入金額-収入を得る為に支出した金額-特別控除(最高50万円)

『賞品』のようにお金以外のモノで貰った場合には、その時価(通常の小売価格)の60%相当額が収入金額となります。今回はケースは、新車という『賞品』なので、330万円(550万円×60%)が収入金額となります。

収入を得る為に支出した金額は、簡単に言えば必要経費です。懸賞に応募する為に使用したハガキ代や切手代などがこれに該当します。今回は、仮に何もかからず0円だったとしましょう。

そうすると、一時所得の金額は、280万円(330万円-0円-特別控除50万円)ということになります。したがって、課税の対象となる金額は、140万円(280万円×1/2)です。

この金額を元に翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行わなければなれません。懸賞により生じた一時所得は『総合課税』といって、給与所得などのほかの所得と合算して課税がされることになります。

たとえば、年収が500万円(控除対象となる配偶者がいて、社会保険料の合計は60万円、副業なしの場合)人のであれば、550万円の新車が当たったことについてかかる最終的な税金は、約16万円くらいになるでしょう。計算式を示しておきますね。

次の(1)-(2)の金額がおおよそ賞品が当たった事についてかかる税金となります。

(1)賞品が当たった場合の税額

500万円(給与等の収入)-154万円(給与所得控除)=346万円(給与所得)

346万円(給与所得)+140万円(一時所得)=486万円(総所得金額)

486万円-(基礎控除38万円+配偶者控除38万円+社会保険料控除60万円)

=350万円(課税所得金額)

最終的な税金 350万円×20%-42万7500円=27万2500円

(2)賞品をもらわなかった場合の税額

346万円(給与所得)-(基礎控除38万円+配偶者控除38万円+社会保険料控除60万円)=210万円(課税所得金額)

最終的な税金 210万円×10%-9万7500円=11万2500円

(1)-(2)=27万2500円-11万2500円=16万円

16万円×102.1%=16万3360円(賞品にかかる所得税及び復興特別所得税)

賞品をもらった際に、源泉所得税として28万5880円を先払いしていれば、きちんと確定申告をすることにより、16万3360円を差し引いた12万2520円分税金が戻ることになります」

※記事公開当時は、「企業が源泉所得税を払ってくれていなければ、賞品を受け取った日の翌月の10日までに、所轄の税務署に源泉所得税を支払う義務があります」としていましたが、支払い義務は企業にありますので、一部内容を修正しました。(7月17日午後5時)

【取材協力税理士】

阿久根 寛宜(あくね・ひろのり)税理士

税理士事務所所長。理系出身の税理士でIT、会計に強みをもつ。経営者のよき理解者、会社のペースメーカーとなることをモットーに質の良い税務会計サービスを提供している。ITを用いた経理の合理化、開業支援業務を得意とし、シンプルかつパワフルな会社経営となるよう丁寧で親身な指導を行う。

事務所名 :阿久根寛宜税理士事務所

事務所URL:http://akune-tax.com/

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では協力ライターと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする