「二世帯住宅建築中に、長男の彼女が他の男性と電撃デキ婚してしまった。慰謝料とれる?」。子育て情報サイト「ママスタ」の掲示板にこんな投稿がありました(http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=3674047)。投稿主は「もう二世帯住宅もほぼ完成です...」と困惑しているようです。
●そのまま「授かり婚」した彼女
長男には10年近く交際する「結婚秒読み」の交際相手Aさんがいました。二世帯住宅の間取りは、Aさんの要望でキッチンや風呂、水回りなどオプションを追加。「Aさんのワガママで、約1500万円建築費がアップした」と言います。
しかし、二世帯住宅建設中、長男とAさんはちょっとした喧嘩になり、Aさんは職場の後輩男性に相談。酔った勢いで一夜限りの関係を持ち、妊娠が発覚してそのまま「授かり婚」してしまいました。
投稿主は「たった1カ月半のケンカ別れの期間に全て変わってしまって。長男も荒れて自暴自棄になってしまいどうしたらいいのかわかりません」とお先真っ暗の様子。何よりAさんが住む前提で計画していた二世帯住宅はどうなるのか、大混乱しています。
果たして、慰謝料を請求することはできるのでしょうか。宮地紘子弁護士に聞きました。
●婚約破棄、慰謝料の支払い義務を負うことも
——今回のケースでは、結婚後の同居生活を前提に話し合いを進めていたようです。婚約破棄とみなされますか。
法律上、婚約とは、将来において適法な婚姻をすることを目的とする契約ですので、正当な理由なくこれを破棄した場合には慰謝料の支払い義務を負います。
婚約は必ずしも、結納のような儀式を伴う必要はなく、互いに将来結婚する気持ちをもって約束すれば成立することとなります。
仮に、争いになった場合には、慰謝料などを請求したい側は、(1)外部に対する婚約の表示があったかどうか、(2)結婚に向けた具体的な行動を伴っていたかどうか、という2点から客観的に婚約の成立を証明する必要があります。
具体的には、結納以外にも、婚約指輪の取り交わし、双方の両親への挨拶やその内容、冠婚葬祭への出席、結婚式場の予約などが挙げられます。
●オプション代の請求は難しい
——婚約破棄された場合、損害賠償が認められるのでしょうか
婚約不履行による損害賠償が認められた場合、損害賠償としては、財産的な損害と精神的な損害(慰謝料)が認められます。
財産的な損害としては、結婚に向けた準備を進める過程でかかった費用が認められます。具体的には、式場や新婚旅行のキャンセル費や指輪の購入費、新居購入費などが挙げられます。
——相談者は、Aさんの希望として追加した二世帯住宅のオプション代を請求できるのでしょうか。
二世帯住宅のオプション代をそのまま請求することは難しいと思います。なぜなら、通常その物件に対して付加価値が生じていると考えられるからです。客観的にみて全く無意味なオプションであれば結論は異なるかもしれませんが全額認められることは難しいと思います。
ただ、慰謝料の算定の中で、不動産の購入や二世帯住宅へのオプションという点が加味される可能性はあります。