運営する特別養護老人ホームで「虐待があった」と事実認定されたことは不服だとして、社会福祉法人「カメリア会」は11月16日、事実認定した渋谷区を相手取り、計3200万円を求める訴訟を東京地裁に起こした。原告側は、不名誉な事実認定による損害だと主張している。
●渋谷区から運営委託された特別養護老人ホーム
訴状によると、「虐待があった」と事実認定されたのは、カメリア会が渋谷区から指定管理者として運営委託された特別養護老人ホーム「つばめの里・本町東」。今年6月、区に通報があったことから、調査が入ったという。
調査は3カ月にわたり、渋谷区は今年10月、カメリア会に対して、高齢者虐待防止法に基づく「心理的虐待」や「介護世話の放棄・放任」などの虐待があったという調査結果を通知した。現在、区はカメリア会に虐待の事実認定を前提とした改善計画書の作成を求めている。
●原告代理人「高齢者虐待防止法の解釈に誤りがある」
一方、カメリア会側は、これらの事実認定は誤りで、虐待はなかったと反論している。
カメリア会側は同日、東京・霞ケ関の司法記者クラブで記者会見を開き、認定された「虐待」についても、渋谷区からその根拠となる事実が開示されていないと主張した。情報開示請求もおこなったが、詳細は明らかにされなかったという。
原告代理人をつとめる深澤勲弁護士と片山律弁護士は会見で、渋谷区の事実認定は、高齢者虐待防止法の解釈に誤りがあると指摘した。
たとえば、「心理的虐待」について、高齢者虐待防止法では、『著しい暴言』や『著しい心理的外傷を与える』などの言動があって、虐待が認定されるが、渋谷区はそうした検証をおこなわずに虐待を認定しているとした。
●渋谷区「社会福祉法人への調査は適切に行っている」
渋谷区は弁護士ドットコムニュースの取材に対して、次のようにコメントした。
「訴状が届いておらず内容を確認できておりませんが、社会福祉法人への調査は適正に行っております。訴状が届いた段階で、しかるべく対応をしてまいります」
