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歌舞伎町卍會・ハウル氏、初公判前に突然の死…過去を語らない男の「真実」は闇に…トー横キッズ「やっぱりさびしい」
ハウル氏(2022年1月中旬/富岡悠希撮影)

歌舞伎町卍會・ハウル氏、初公判前に突然の死…過去を語らない男の「真実」は闇に…トー横キッズ「やっぱりさびしい」

新宿・歌舞伎町で、炊き出しなどをしていたボランティア団体「歌舞伎町卍會」(解散済)。そのリーダーでありながら、少女にみだらな行為をしたとして、逮捕・起訴されたハウル・カラシニコフ氏が東京拘置所内で死亡したと報じられた。

はなから偽善の活動だったのか、メディアに取り上げられるうちに調子に乗ってしまったのか。かつてハウル氏と目線を合わせた「地べた取材」をした者として、真実が闇に消えたことは残念だ。(ジャーナリスト・富岡悠希)

●古株のトー横キッズ「やっぱりさびしいです」

「友人であった人間がこの世を去るときは、やっぱりさびしいですね」

歌舞伎町にたむろする「トー横キッズ」古株の男性、Aさん(20代)は11月15日午後、ハウル氏死去の報道を受けて、こう語った。

ハウル氏が「歌舞伎町シネシティ広場」(通称:広場)に顔を出すようになった2021年春に知り合った。当初は、割りと近しい関係にあったという。

ところが、ハウル氏は、次第に多くの女性にアプローチを始めた。その手口は強引で、Aさんは「こいつはヤバい」と徐々に距離を置いた。

最近は、疎遠になっていたというが、Aさんはハウル氏を悼んだ。

●ネット上では厳しい意見もあがっている

「残念です」「ご冥福をお祈りします」

歌舞伎町で知り合った仲間の一部も、Aさんと同じ気持ちになっているようだ。メンバーのLINEには、こうしたメッセージが届いている。

ツイッターでも、似たような反応があった。

「亡くなったってマジ!?」「びっくり かなしいね歌舞伎町界隈」「今週末広場に花束持って行く」

一方で、ハウル氏に対する厳しい意見も多い。

ハウル氏は今年6月、18歳未満と知りながら家出中の少女にみだらな行為をしたとして、都青少年健全育成条例違反の疑いで逮捕されて、7月に起訴された。11月22日には、初公判を控えていた。

もちろん有罪と宣告されるまでは、「推定無罪」が原則だ。しかし、有罪率の高い日本では逮捕された時点で、世の中からは激しいバッシングが起きる。

特にネットの匿名アカウントでは、死亡が報じられたあとも容赦がない。

●過去を明かしたがらなかったハウル氏

筆者は今年1月中旬、ハウル氏にインタビューを申し込んだ。真冬だったため、喫茶店かファミレスで話を聞くことを想定していた。ところが、待ち合わせ場所のつもりだった広場に行くと、彼から「動きたくないから、ここで」と言われてしまった。

気温4度の中、仕方なく「地べた取材」を始めた。体が芯から冷えていった。

記事にするには、1時間ほど聞くつもりだった。ところが15分もすると、「もういいですかね」。まったく足りないことから、粘ると、「富岡さんの取材、長いですね」「ほかのメディアは、これぐらいですよ」。何度も打ち切ろうとした。

さらに特異な取材となったのが、自身の過去を明かしたがらないことだった。

記事では、歌舞伎町卍會の活動や、それに対するハウル氏の思いを紹介するつもりだった。トー横キッズに寄り添おうとする彼を知るには、これまでの歩みを把握する必要がある。

質問を繰り返すが、「過去を全部明かすつもりはない」。「全部でなくても良いので、教えてもらえる範囲で」と食い下がったが、得られた情報は少なかった。

取材者としてモヤモヤ感があったが、記事にした。当時、歌舞伎町卍會の活動は広がりを見せていて、世の中に伝える価値があると考えたからだ。原稿を受け取った編集者も同様の意見だった。

その記事では、ハウル氏がトー横キッズと、ベタベタし過ぎない距離感で接していることを好意的に記した。キッズの多くが大人への不信感を持っていることから、彼ならではのアプローチと捉えた。

●昨年秋からメディア露出が増えていった

しかし、メディアに見せていたのとは別の顔をハウル氏は持っていた。Aさんたちトー横キッズは、早い段階で気が付いたというが、多くのメディアは把握できなかった。

裏の顔をつかめないまま、ハウル氏の言動をそのまま取り上げたメディアは多数あった。中でもNHKは今年2月、看板番組『クローズアップ現代+』に登場させていた。キッズに寄り添う、心優しい「兄貴」と位置付けた。

ハウル氏は、昨年秋から今年始めにかけて、一気にメディアへの露出を増やした。そしてその後の逮捕で、短期間で消えることになった。

1月のインタビューで、ハウル氏は「親がいなかった僕は以前、野良犬のような生活をしていました」と明かした。そうした過去が、キッズやホームレス支援につながったという。

言葉をその通りに受け止めると、広場に来て支援活動をし始めた2021年春ごろは、真っ当な「善意」を持っていたのかもしれない。

●公判で真実を明らかにしてほしかった

写真撮影は、サングラス姿しかOKが出なかったが、男性の筆者から見ても、素顔はいわゆる「イケメン」の部類に入る。

歌舞伎町卍會が大きくなり、メディアの取材を受けるようになるにつれ、増長してしまったのではないか。そして、ついに一線を超えてしまったと見立てる。

残念なことに、周囲に止めてくれる仲間はいなかったようだ。解散前の卍會は、さほどガバナンスが効いている組織と見受けられなかった。

11月22日からの公判で、本来ならば真実を明らかにしてほしかった。自身の行為を真摯に反省して、罪をつぐない、更生の道を歩むこともできたはずだ。

もはや広場に戻ることは歓迎されていなかったが、ほかにも生きる場所はあっただろう。まだ30代前半で、チャンスをつかめたかもしれない。

更生への歩みも含め、取材機会を永久に失ったことを悔しく感じている。

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