愛知県豊橋市は6月15日、狂犬病を発症した外国籍の男性が死亡したと発表した。入院し治療していたが6月13日に死亡したという。
男性はフィリピン滞在中の2019年9月、犬に足をかまれたという。今年2月に来日し、5月に狂犬病を発症していると分かった。
狂犬病は致死率がほぼ100%。世界では年間6万人近くが亡くなっているが、日本国内での確認は今回が14年ぶりだった。
●日本国内での人の感染は1956年が最後
厚労省のQ&Aページによると、狂犬病は全世界に分布しているという。除外されるのは日本、オーストラリア、ニュージーランドなど一部の国だけだ。
日本国内の感染は、人の感染が1956年、動物だと1957年にあった猫の感染を最後に60年以上ないそうだ。
国内で問題になるのは、海外で感染して入国するケースで、今回の1つ前にあたる2006年がフィリピン、その前の1970年がネパールでの感染だった。
同Q&Aページでは、海外で犬や猫、野生動物に咬まれるなどしたときは、傷口をせっけんと水でよく洗い流したうえで、早期に医療機関にかかりワクチンを接種するよう指示されている。
●飼い犬の予防接種、おこたると罰則
日本でこれだけ感染者が少ない理由の1つに、1950年に施行された「狂犬病予防法」の存在がある。
同法によれば、飼い主は市町村に犬を登録し、年1回の予防注射をうたせるなどしないといけない。
違反した飼い主は20万円以下の罰金の対象になる。
●実際には違反が横行
ただ、近年は守られていないことも多いようだ。
一般社団法人ペットフード協会の調査によると犬の推計飼育頭数は約890万匹なのに対し、自治体の登録数は約620万匹と大きな乖離がある(いずれも2018年)。
また、自治体に登録された犬に限っても、予防接種率はおよそ7割で、この30年ほどで大きく低下している。
近年、犬の飼育頭数が減少に転じた分、リスクが急増したとまでは評価しづらいが、違反が常態化していると言えそうだ。
「狂犬病自体は発生しておらず、危機感が薄らいでいるのだと思います。罰則があることを知らない人も多いのでしょうが、毎年200件ほど検挙されています。いっそう普及啓発していかねばと考えています」(厚生労働省の担当者)
厚労省の啓発ポスターより(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000620491.pdf)