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「特許も商標権も取れるものは取っておくべき」スタートアップ、知財の心得を議論
パネルディスカッションの様子

「特許も商標権も取れるものは取っておくべき」スタートアップ、知財の心得を議論

せっかく起業をするのに、知的財産の問題が原因となってビジネスが進まないーー。こうした事態に起業家が陥らないよう、知的財産権に詳しい弁護士らが1月23日、東京・丸の内の「Startup Hub Tokyo」でパネルディスカッションを開いた。

冒頭、日弁連知的財産センター委員を務める星大介弁護士が、「スタートアップが知っておきたい知財の話」と題して説明。「知的財産権は、技術的アイデアや創作的表現、製品デザイン、信用等の目に見えない資産を守る権利だ」と話した。

特許は公開されることから、侵害者の過失が推定される点についても紹介。「損害賠償請求をするには、わざとか不注意かでやったことが必要で、(特許は公開されており)侵害者が『知りませんでしたよ』というのは通用しない。逆のパターン(無意識のうちに侵害してしまっている場合)もあるので注意する必要がある」と述べた。

●ライセンス付与先の品質チェックを。粗悪なものの放置はダメ

その後、日弁連中小企業法律支援センター事務次長の八掛順子弁護士をモデレーターとし、弁護士らがのパネルディスカッションで見解を語った。

日弁連知的財産センター委員の市毛由美子弁護士は、「(ライセンスを付与した相手方)が作っている粗悪なものを放置してはいけない。やめてくださいと言わないと、(自らの)ブランド価値が毀損する。クオリティーコントロールをきちんとやることが大事」と述べた。

会社を辞めて独立する際の注意点として、「(その会社のビジネスと競争することはいけないという)競業避止契約を求められる場合がある。いろんな事情でサインしてしまうかもしれないが、(憲法が保障する)職業選択の自由、生存権に直結する非常に重要な権利。いつまでも制約することはできないというのが最高裁の判示だ」と話した。

●日本郵便と戦った「ゆうメール事件」

星弁護士は「ゆうメール事件」に言及。これは、「ゆうメール」という商標権を既に保有していた札幌の企業が、日本郵便(郵便事業会社)に対して商標権の使用差し止めを要求した訴訟のことで、一審は札幌の企業が勝訴(2012年1月)。その後、知財高裁で和解が成立したものだ。

「ゆうメールの事件のように、知られていなくても商標というものは取れる。もう少し経ってからというよりは(ビジネスを)始める時に取ったほうがいい。取れるものは取っておいたほうがいいというのは間違いない」と話した。

起業家に接することが多いというStartup Hub Tokyo運営事務局の小野修・運営統括マネージャーは、「意外に同じことを同じタイミングで他の場所で考えているということは結構ある。デザインについてもあまり妥協しないで、差別化をするようにしたほうがいい」と呼びかけた。

(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama

(弁護士ドットコムニュース)

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