バンド・OKAMOTO'Sのベーシストで、お笑いタレント・浜田雅功さんの息子でもあるハマ・オカモトさんが、米国フェンダー社と「エンドースメント契約」を交わしたことが明らかになった。フェンダーといえば、世界的に知られる楽器ブランドだ。
今後、ハマさんはこの契約に基づいて、フェンダーから楽器の提供を受けることになる。同社の公式サイトによれば、米国フェンダー社が日本人ベーシストと「エンドースメント契約」を結ぶのは今回が初。ハマさんが自身のツイッターで契約締結について発表すると、ファンらから多数の祝福ツイートが寄せられた。
英単語の「エンドースメント(endorsement)」には「推奨」という意味があるが、この「エンドースメント契約」とは、いったいどんな内容の契約なのだろうか。エンターテインメント法にくわしく、自ら楽器も演奏する小野智彦弁護士に聞いた。
●エンドースメント契約は、もともとスポーツの世界で広まった
「エンドースメント(endorsement)とは、もともとは『裏書き』を意味する言葉ですが、契約上で使われる『エンドースメント』とは、アスリートや芸能人、研究者などの専門家ら有名人が『あるプロダクトを推奨すること』を言います。人気有名人によるブランド力の裏書きという意味でしょうね」
エンドースメント契約の意味について、小野弁護士はこのように説明する。
「エンドースメント契約は、もともとスポーツの世界で盛んに行われてきました。選手個人に対する契約形態の1つで、企業がエンドーサー(endorser)である有名アスリートと肖像権利用や商品化権の独占契約を結び、それを商品販売に反映させるために行われるものです。ナイキの『マイケルジョーダンモデル』などは、皆さんにもご記憶にあると思います。
今回、ハマ・オカモトさんが、米国フェンダー社と締結したエンドースメント契約は、先のスポーツの世界で行われてきたものの、楽器版だと思えばいいでしょう」
●そのプレイヤーの「モデル」が作られる場合が多い
では、エンドースメント契約の内容は、具体的にはどのようなものだろうか。
「基本的には、プレイヤーはメーカーから楽器を無料で提供してもらう代わりに、そのメーカー以外の楽器を使わないという拘束を受けます。もし他メーカーの楽器を使う場合はロゴをテープなどで隠さないといけません。
一方、メーカーは無料で提供する代わりに、カタログなどでそのプレイヤーモデルの楽器などを製造・販売できます。つまり、ハマ・オカモトモデル、というフェンダー社のベースが出てくることになります。プレイヤーが著名かつ人気のある方であればあるほど、それだけ広告効果が上がるわけですね」
このようにエンドースメント契約には、一般的に「楽器使用のシバリ」があるということだ。ただ、ハマさんはツイッターで「誤解されるから補足すると、今後フェンダーしか使えない、という事ではありません」とつぶやいており、特例条件があるのかもしれない。
しかし、ブログでハマさんは「中学生の頃、レポートのテーマにしたほどFenderの楽器が好きな僕」「これからはアンバサダーとして、米国Fender社と共に、楽器の未来に繋がるような様々な事にトライしていきたい」とも記しているので、実際にフェンダー以外の楽器を使うことはほとんどないのではないだろうか。
●エンドースメント契約は、その道の第一人者のあかし
一方、小野弁護士によると、エンドースメント契約と似ているが違うものとして、「モニター契約」があるという。
「これはサンプルを貸しますので使って下さい、という契約で、プレイヤーはメーカーから楽器の貸与を無償で受けることができます。
エンドースメント契約の場合はメーカーが楽器を無料で『提供』しているのでプレイヤーはその楽器を第三者に処分することができますが、他方、モニター契約は『レンタル』ですので、第三者への処分はできない、という違いがあります」
また、モニター契約の場合は、メーカーはエンドースメント契約をしていないので、その楽器を使うかどうかはプレイヤーしだいになり、それほど大きな広告効果は得られないでしょう」
逆にいえば、大きな広告効果をのぞめるからこそ、メーカーは「エンドースメント契約」を結ぶのだろう。つまり、有名メーカーがエンドースメント契約を結んだということは、それだけ広告効果があるアーティストとして評価されたということでもある。小野弁護士も次のようにエールを送っている。
「プレイヤー自身が崇拝しているメーカーとエンドースメント契約を結んだ場合は、その道の第一人者と指名されたようなもので、とても栄誉なことでしょう。ハマ・オカモトさんの益々のご活躍をお祈りしています」