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新聞販売店が「押し紙」を主張 注目裁判、15日に判決
原告の店で出た残紙(ジャーナリスト黒薮哲哉さん提供)

新聞販売店が「押し紙」を主張 注目裁判、15日に判決

購読者数を大幅に上回る新聞を仕入れさせられたなどとして、新聞販売店の元店主が佐賀新聞を訴えた裁判の判決が5月15日、佐賀地裁で言い渡される。

訴えたのは吉野ヶ里販売店の元店主。大量の仕入れを強制されたことで、2015年末の廃業にいたったとして、2016年7月に提訴。損害賠償や逸失利益など約1億1500万円を求めている。

●ほかの販売店も裁判に

佐賀新聞をめぐっては、同時期に別の販売店が仕入れ部数の削減を認めてもらえず、契約更新も拒否される事件があった。

この事件では、営業の続行を求めた仮処分で、販売店側の主張が認められている。訴訟でも2019年12月に和解。現在も営業中だ。

その弁護団が今回の事件も担当していることから、裁判所の判断が注目される。

●新聞社の強制か、販売店の判断か

今回の裁判で焦点になっているのは、原告の吉野ヶ里販売店が仕入れていた「読者数を大幅に超える部数」が強制されたものかどうかだ。

販売店ではもともと、雨で新聞が濡れることなどを想定し、「予備紙」を上乗せして注文している。

予備紙の量は、販売店によってまちまちだが、新聞公正取引協議会(中央協)が30年ほど前に示したモデルでは、実配数(≒購読者数)の2%が適正とされている。

この予備紙があるため、配達されない「残紙」が出ること自体は仕方がない。

しかし、この残紙が、新聞社側の圧力で膨れ上がることがある。これが「押し紙」だ。

あるいは、広告主への背信行為ではあるが、折り込み広告料などを目当てに、販売店が自発的に仕入れを増やすこともある。この場合は「積み紙」「抱き紙」などと呼ばれる。

つまるところ、「残紙」がどういう性格のものかが重要になってくるのだ。

●仕入れの2割弱「配達しない新聞」だった

訴状などによると、同販売店の実配数(購読者)は2500部ほど。2009年4月時点で、予備紙をのぞいた残紙は1日300部ほどあったという。仕入れに占める割合はおよそ10%だ。

これが、増加傾向をたどり、ピーク時の2012年6月には18.67%になった。

その後、残紙は減っていくが、廃業した2015年12月でも13.85%あった。

●販売店「押し紙だ」

販売店側は仕入れについて、佐賀新聞から前年度末の実績に、増紙目標分を上乗せした部数を発注させられていたと主張している。

立場の違いを利用して、新聞社側が圧力をかけていたというものだ。

このご時世に新聞の契約を獲得するのは難しく、残紙の割合が増え、経営の負担になっていったという。

また、仕入れを減らすよう要求したが、拒否されたとも述べている。

●新聞社「積み紙だ」

一方、佐賀新聞は、販売店の残紙率は把握できず、販売店の自己申告にもとづいて注文部数を送っているだけだと反論している。

大量の仕入れは原告販売店の意思で、同業者に販売実績をアピールすることなどを目的とした「積み紙」だったという主張だ。

具体的な部数減の申し入れもなかったとし、廃業にいたったのは、元店主の経営力や熱意が足りなかったからとしている。

●販売店側の勝訴はまれ

メディア等で押し紙の存在は半ば公然となっているが、販売店側が勝訴した事例はまれ。販売店側に有利な結果になったとしても、和解で終わることがほとんどだ。

今回、同じ弁護団が担当した、別の佐賀新聞販売店の主張が、仮処分で通っているだけに、どんな結果が出るか注目される。

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