佐村河内守さんのゴーストライターを務めていた作曲家の新垣隆(にいがき・たかし)さんが6月8日、東京・阿佐ヶ谷のライブハウスで開かれたトークイベントに登場した。新垣さんは、曲の権利をめぐって、現在、佐村河内さんと争いが生じていることについて回答。子どものために書いた「二つの作品」については、単独の著作権を主張していることを明らかにした。
●佐村河内さんは「共同名義」を主張
佐村河内さんの「作曲偽装」については、実際に譜面を書いていたのが新垣さんであることは、二人とも見解が一致している。しかし、佐村河内さんは、自分も構想などの形で作曲に関わっていたので「共作」であると主張しているとされる。
それに対して、新垣さんは、「ヴァイオリンのためのソナチネ」と「ピアノのためのレクイエム」については自分の名義にしたい意向だと、一部メディアが報じている。新垣さんといえば、佐村河内さんのゴーストライターだったことを謝罪した2月の記者会見で、「著作権はすべて放棄したい」と話していたはずだが・・・。
この日のイベントで会場から質問された新垣さんは、報道を認めたうえで、この二つの作品に関しては、「私の名前にしてほしいと主張している」と答えた。「共同名義にしたい」という佐村河内さん側の申し出に対して、代理人を通じてこう返事をしているのだという。
新垣さんは、単独の著作権にこだわる理由として、「子どもたちのために書いた曲だから」という点をあげた。「ピアノのためのレクイエム」は東日本大震災で母親をなくした少女のために作られた曲だ。一方、「ヴァイオリンのためのソナチネ」は義手のヴァイオリニストの少女に贈られた曲で、スケートの高橋大輔選手がソチオリンピックで使用したことでも知られている。
著作権問題をめぐる新垣さんとの質疑応答は次の通り。
――「ヴァイオリンのためのソナチネ」と「ピアノのためのレクイエム」について、新垣さんご自身の名義にしたいと佐村河内氏側に伝えた、と報じられている。
新垣:そのようにしたいということを、私の代理人に伝えました。
――佐村河内さん側に申し入れたのか?
そうだと思います。
――どのような経緯があるのか?
新垣:佐村河内さん側から、共同名義にしてくれないかと申し入れがあった。それに対して、私はそのように希望を出しているんです。
――その理由は?
新垣:二つの作品とも、未成年の子どもたちのために書いた曲です。
――著作者人格権というクレジットに名前が載る権利なのか、著作権という具体的にギャラが入ってくる権利なのか? そこは分けているか?
新垣:著作者人格権に関して、共同名義にするべきだ、というのが彼(佐村河内さん)の主張なんですね。それに対して、その二つの作品に関しては、私の名前にしてほしいという主張をしています。