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仙台育英高の野球部員に「ビール提供」飲食店経営者、逮捕までする必要あった?
写真はイメージです(Graphs / PIXTA)

仙台育英高の野球部員に「ビール提供」飲食店経営者、逮捕までする必要あった?

高校野球の強豪校、仙台育英高校(宮城県)の現・元硬式野球部員らに対して酒を販売したなどとして、未成年者飲酒禁止法違反と食品衛生法違反(無許可営業)の疑いで、仙台市内の飲食店経営者2人が5月8日、宮城県警により逮捕されたと報道された。

河北新報などの報道によると、逮捕された2人は2017年10月下旬から11月下旬にかけて、仙台市内の雑居ビルで保健所の許可を受けずに飲食店を営んだうえ、11月27日午後8時から11時ごろに当時17歳から18歳の現・元硬式野球部員ら9人が未成年だと知りながら、ビールや日本酒を提供した疑いがある。

飲酒後の深夜に、このうちのひとりが体調を崩し、急性アルコール中毒で救急搬送されたことで発覚した。野球部は、日本学生野球協会から2018年6月4日まで6か月間の対外試合禁止処分を受け、当時の監督や部長が引責辞任したという。

河北新報は「県警によると、未成年者飲酒禁止法違反容疑での逮捕は東北で初めて」と報じている。未成年に飲酒させたことで逮捕されるという事件は、よくあるものではなさそうだ。背景にある法的問題について、冨本和男弁護士に聞いた。

●出頭要求に応じなかったのが理由か

ーー未成年者飲酒禁止法違反で逮捕されたという話は聞いたことがありませんでした

「確かに未成年者飲酒禁止法違反で逮捕されたという例は聞きません。未成年者飲酒禁止法は、飲酒による未成年者の心身への悪影響から未成年者を保護するための法律ですが、未成年者に酒を販売した者は『50万円以下の罰金』で処罰される可能性があります。それでも罰金刑ですので、軽い方の犯罪であり、逮捕は滅多にないと思います」

ーー逮捕されるとしたら、どういった場合が考えられるでしょうか

「軽い犯罪(30万円以下の罰金に当たる犯罪)でも、住居不定の場合や正当な理由もないのに出頭要求に応じなければ逮捕されます(刑事訴訟法199条但書)。こうした場合、逃亡や証拠隠滅のおそれが疑われるからです。

今回、未成年者に酒を出した時期と逮捕された時期に半年近いタイムラグがありますので、警察が何度か出頭要求したのに応じなかったのではと思います」

ーー今回、逮捕容疑には食品衛生法違反も含まれているという報道ですが、逮捕の要因としては未成年者飲酒禁止法違反とどちらが大きいと考えられますか

「食品衛生法違反で逮捕されたというケースは過去に何度もあり、聞いたことがあります。ただ、上で述べたように、未成年者に酒を出したことについて警察による出頭要求に応じてこなかったと思われます。その意味では、未成年者飲酒禁止法違反の方をより重く捉えて逮捕に踏み切ったのではないでしょうか」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

冨本 和男
冨本 和男(とみもと かずお)弁護士 法律事務所あすか
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。

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