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母親を殺害か、13歳の娘を児相に通告 刑事責任はどうなる?
静岡県警本部(2022年4月、弁護士ドットコムニュース撮影)

母親を殺害か、13歳の娘を児相に通告 刑事責任はどうなる?

静岡県牧之原市の住宅で1月16日夜、住人の40代女性が刺されて亡くなる事件があった。NHKなどの報道によると、母親を切り付けたとして、静岡県警は中学生の娘(13)を児童相談所に通告したという。

どのような経緯で事件が起きたのか、詳しいことはまだ明らかになっていないが、13歳が事件を起こした場合、刑事責任はどうなるのだろうか。澤井康生弁護士に聞いた。

●14歳未満の子どもは「一律に責任能力がないものとして扱われる」

——13歳が刑事事件を起こした場合、責任は問われますか。

14歳未満の子どもは、刑事未成年者として一律に責任能力がないものとして扱われます(刑法41条)。14歳未満は人格形成の途上にあることから、刑事政策的観点から責任能力が排除されるのです。

そのため、今回のような13歳を含む14歳未満の子どもが刑罰法令に触れる行為をした場合であっても一律に責任能力がないものとして扱われますので、刑事責任を問われることはありません。犯罪自体が成立しないので逮捕することもできません。

——刑事事件を起こした14歳未満の子どもは、その後どうなるのでしょうか。

14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした者は触法少年として扱われます(少年法3条1項2号)。

警察は触法少年に対しては、捜査ではなく補導して事件の調査を行います。犯罪自体が成立しないので、捜査をすることができないためです。

警察は触法少年に対する調査を行ったら、児童相談所に通告・送致します。特に今回のようなケースは一定の重大犯罪(故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪)が問題となりますので、警察は必ず児童相談所に送致しなければなりません(少年法6条の6第1項)。

児童相談所は福祉的観点から少年の調査を行い、所長の判断により家庭裁判所の審判に付するのが適当と判断された場合には、今度は家庭裁判所に送致します(児童福祉法27条1項4号)。

送致を受けた家庭裁判所は調査、審判を行い、最終的には児童自立支援施設または児童養護施設に送致することになるものと思われます。

プロフィール

澤井 康生
澤井 康生(さわい やすお)弁護士 秋法律事務所
警察官僚出身で警視庁刑事としての経験も有する。ファイナンスMBAを取得し、企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験や金融コンプライアンスオフィサー1級試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。陸上自衛隊予備自衛官(3等陸佐、少佐相当官)の資格も有する。現在、早稲田大学法学研究科博士後期課程在学中(刑事法専攻)。朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。毎月ラジオNIKKEIにもゲスト出演中。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。

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