札幌市内で小学3年の女児が行方不明になり、6日後に保護された事件。監禁容疑で2月上旬に逮捕されたのは、26歳の無職男性だった。だが、報道によると、警察の取り調べに対して「意味の分からないこと」を供述しているとのことで、警察は容疑者の「責任能力」について慎重に調べているという。
世間の注目を集めた事件だけに、今後の展開が気になるところだが、そのカギになりそうな容疑者の「責任能力」とは、いったい何なのだろうか。今回のような刑事事件では、それはどんな意味を持つのだろうか。刑事事件にくわしい星野学弁護士に聞いた。
●犯人を責められるかどうかが問題
「刑事裁判における『責任能力』とは、物事の是非や善悪を識別し、それに従って行動する能力のことである、と説明されています。
たとえ犯罪行為を行ったとしても、犯行時に責任能力がなかった場合には、心神喪失者の行為として『無罪』になります」
なぜ責任能力がないと、無罪になるのだろうか?
「たとえば、注意を受けたことでカッとして母親を殺してしまったとしたら、殺人罪になりますよね。
でも、もしその人が、『母親に悪魔が取り憑いているという妄想に支配され、母親を助けるために悪魔(実は、母親)を退治しただけだ』と信じきっていたようなケースなら、どうでしょうか。その人に必要なのは『責め』や『罰』ではなく、適切な『治療』である、という考え方もあり得ます。
このように、犯人を責められるかどうかが、『責任能力』の有無の問題なのです」
●無罪になる可能性は低い?
そうなると、今回のケースはどう考えたらいいのだろう?
「本件で逮捕された男性は、警察の取り調べに対し、『意味の分からないことを供述している』と伝えられています。しかし、報道によると、この男性は女児を誘って自分の家に連れて行き、さらに女児が家から逃げないように対応もしていたということです。
きちんと物事を判断する能力がなければ、このような犯行を計画・実行することは難しいでしょう。
したがって、今回のケースについては、『犯行は立証されたが、責任能力がなかったので無罪』という結論に至る可能性は、低いのではないでしょうか」
星野弁護士はこのように話していた。