東大農学部4年生の男子学生が1月17日、小田急線内で女子高生の下着の中に手を入れるなどした疑いで現行犯逮捕されたと報じられている。
報道によると、容疑は強制わいせつ罪で、男子学生は「痴漢する相手を探していた」と供述する一方で、「下着の上から触った」として容疑の一部を否認しているという。
下着に手を入れていなかった場合と入れていた場合とでは、どう異なるのだろうか。刑事弁護にくわしい鐘ケ江啓司弁護士に聞いた。
●「性的自由に対する侵害が強いほど強制わいせつで立件される可能性が高い」
痴漢事件では、「迷惑防止条例違反」か、今回のように「強制わいせつ」の容疑で逮捕されるケースがあるが、これらの罪の線引きは?
「こういう場合、まず強制わいせつ罪が成立するか否か判断することになります。
理論的には、最高裁平成29年11月29日大法廷判決により
『行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らし、その行為に性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断』
するというものです。
その上で、強制わいせつにはあたらないとしても、『わいせつな行為に至らない程度のみだらな言動』であるとされれば条例違反となります。
どちらの罪名で立件するかは、各地の警察で、触った部位や態様によって一定の基準が設けられています。東京都であれば警視庁の基準がありますが、最終的には個別判断になります。
一般論としては性的自由に対する侵害が強いほど強制わいせつで立件される可能性が高いといえます。ただ、警察が強制わいせつ罪で逮捕しても、検察官の判断で迷惑防止条例違反で起訴されることもあります」
では、逮捕された男子学生が「下着の上から触った」と話している通り、下着の上からだったしても、強制わいせつ罪にあたる可能性はある?
「本件の詳細がわかりませんが、触った部位や執拗さによっては当然ありえます。着衣の上から触った事案より、下着の上から触った事案の方が性的自由に対する侵害の度合いが高いと考えられます」