落とし物の中に大量のお札ーー。誘惑にかられてしまうのも人情なのかもしれませんが、ちゃんと届け出ないと大変なことになってしまいます。
電車の中に置き忘れられた、現金280万円が入った財布を持ち去ったとして、清掃員の男性(64)が遺失物横領の容疑で逮捕されました。FNN PRIMEが9月4日に報じました。容疑を認めているそうです。
持ち主は、会社のお金を運んでいる途中で置き忘れたといいます。逮捕された男性が7月11日午前1時ころ、車庫での清掃中に見つけて、持ち去ったとみられています。
落とし物の扱いは法律上、どうなっているのでしょうか。(監修・濵門俊也弁護士)
●拾ったもの「速やかに」届け出なければならない
落とし物をどう扱うべきかは、遺失物法で定められています。
同法4条によると、落とし物を拾った人は、速やかに、本人(遺失者)か警察署長、拾った施設の占有者(≒管理者)に渡さなければなりません。
届け出ておけば、3カ月経っても持ち主が見つからなかったとき、クレジットカードのようなものを除いて、その落とし物をもらうことができます(民法240条)。
仮に持ち主が見つかっても、5~20%相当の報労金(お礼)をもらう権利があります(遺失物法28条1項)。
通帳や小切手、手形など落とし物によっては価値の評価が難しく、裁判で争われた事例もありますが、現金入りの財布を拾った今回のケースであれば持ち主と話し合って、約14〜56万円を請求できたと考えられます。
●ネコババは「横領」です
一方、拾ったものをネコババすると、今回のように「占有離脱物横領罪」(本件の場合は、遺失物横領罪)に問われることもあります(刑法254条)。落とし物を自分のものにすると「横領」になり得るのです。
法定刑は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料(1000〜9999円)。比較的軽微な処罰で済むことが多いようですが、態様によってはこの範囲内で重くなることもあります。