「●●容疑者を殺人の容疑で再逮捕した」「△△容疑者を別の詐欺容疑で再逮捕した」。すでに逮捕されて、身柄を拘束されている被疑者をもう一度逮捕する「再逮捕」のニュースをしばしば見かける。
だが、すでに身柄が確保されている被疑者を「再び」逮捕するというのは、どういうことなのだろうか。なぜ警察は、もう一度逮捕するのか。刑事手続きにくわしい小笠原基也弁護士に聞いた。
●同じ被疑事実での「逮捕・勾留」は原則1回
「警察は被疑者を逮捕したとしても、いつまでもその身柄を拘束できるわけではありません。逮捕と、それに続く勾留にはそれぞれ、時間制限があります。逮捕は最大72時間、勾留は最大20日です。その期間内に起訴しない限り、釈放しなければなりません」
つまり、起訴前の被疑者の身柄拘束には、約23日間という「時間制限」があるわけだ。では、再逮捕というのは、同じ被疑事実で、逮捕→勾留という流れを何度も繰り返すことなのか。
「同じ被疑事実についての逮捕・勾留はそれぞれ『1回のみ』という原則があります。
そのため、ある犯罪事実について、一度逮捕・勾留し、その期間が満了した後に、改めて同じ犯罪事実で逮捕・勾留することは、例外的な場合を除いて許されません」
そうだとしたら、再逮捕とはどういうことだろうか。
「当初逮捕された犯罪事実とは別の犯罪事実があれば、その事実について逮捕することは可能です。これが、報道などで広く使われている『再逮捕』のことです。
たとえば、捜査機関がA容疑者を死体遺棄の容疑で逮捕し、これと密接な関連のある殺人について別件で取り調べ、捜査を進めるなどして、殺人についてもAの容疑が固まったとしましょう。
その場合、死体遺棄については、処分保留のまま釈放したうえで、殺人の容疑で再逮捕することになります」
●期間制限を免れるための「再逮捕」は違法になることも
関連のない事件で再逮捕をすることも可能なのか。
「たとえば、B容疑者に、関連性のない詐欺と恐喝の容疑がかかっていて、詐欺の容疑で、逮捕・勾留されていたとしましょう。
この場合、詐欺事件の勾留を利用して、恐喝事件の取り調べをすることは、違法な別件取り調べとして許されません。これを、『事件単位の原則』と言います。容疑者の手続保障のためにこうした原則が定められています。
こうした場合、詐欺について起訴するか、釈放するといった処分をしたうえで、恐喝で再逮捕してその取り調べを行うという方法が取られることがあります」
犯罪事実が違っていれば、どんな場合でも再逮捕できるのだろうか。
「逮捕・勾留の期間制限を免れ、拘束期間を引き延ばすために、小出しに逮捕・勾留を繰り返すような場合は、逮捕・勾留が違法となる場合もあります。
また、逮捕・勾留が繰り返された結果、不当に長く身柄拘束されたり、裁判の時間が非常に長くかかった場合は、憲法違反として、自白があっても証拠にできないことがあります。また、免訴(有罪・無罪の判断をせずに裁判を打ち切る)となることもあります」
小笠原弁護士はこのように述べていた。