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「手錠・腰縄の姿を法廷で見られたくない」被告人の訴えにどう応えるべきか?
手錠などで拘束された姿を見れば、「犯罪者だ」という印象を持つ人もいるだろう

「手錠・腰縄の姿を法廷で見られたくない」被告人の訴えにどう応えるべきか?

警察官を蹴ってケガを負わせたとして、傷害と公務執行妨害の罪で起訴された男性が、「手錠や腰縄をかけられた姿を法廷で見られたくない」として、裁判への出廷を拒み続けていることがわかり、議論を呼んでいる。

報道によると、男性は、今年2月に開かれるはずだった初公判で、手錠や腰縄をはずした状態で出廷できるように求めた。しかし、大阪地裁はこれを認めなかったため、出廷を拒否しているという。大阪地裁は12月9日、刑事訴訟法に反するとして、被告人に同調して出廷を拒んだ弁護人に対して科料3万円の決定を出した。

そもそも、なぜ、被告人は手錠や腰縄で拘束された状態で入廷させることになっているのだろうか。今回のように「拘束された状態では入廷したくない」という理由で、出廷を拒むことは認められないのか。刑事手続きにくわしい藤本尚道弁護士に聞いた。

●「犯罪者のイメージそのもの」

「手錠・腰縄姿を見られたくないという心情は十分に理解できます。

手錠・腰縄で身体拘束を受けている姿は『犯罪者のイメージそのもの』だからです。この被告人も『裁判官に犯人だと思われたくない』旨を述べています」

刑事裁判には「無罪推定の原則」がある。本来、有罪が確定するまでは「犯人」と扱われないはずだが、なぜ手錠や腰縄が認められているのだろうか。

「刑事収容施設法では、被告人の逃走を防止するため、護送の際には手錠や腰縄を使用できる旨を定めています。法律は『使用できる』と言うだけですから、『使用しない』という選択肢もあり得ます。

実際に、裁判員裁判の場合は、裁判員が法廷に入る直前に手錠を外し、休廷などの際には裁判員が退場してから手錠をするという運用がなされています。

一般市民である裁判員が手錠をされている被告人の姿を見て、予断や偏見を抱かないように、こうした運用がとられています」

すべての裁判でそうした運用をするわけにはいかないのだろうか?

●「さらすことが目的ではない」

「ただ、万が一にも『事故』が起きた場合の責任を考えると、無事に法廷に到着してから手錠・腰縄を外すという現行の実務運用を『変えろ』とは、とうてい言えそうにありません」

万が一の事態があるから、現状のままで仕方ないということだろうか。

「そうは思いません。ちょっとした工夫なら可能だと思います。

たとえば、刑事事件の被害者などを証人として出廷させる際に、つい立てを使って、被告人や傍聴席から証人の姿が見えないようにすることがあります。

『遮蔽(しゃへい)措置』と呼ばれるものです。

これと同じ方法で、手錠・腰縄をされた被告人が法廷に入る姿を傍聴席から『遮蔽』して見せないことも十分に可能です。

手錠・腰縄はあくまで逃走防止の手段に過ぎず、手錠・腰縄姿を傍聴人に『さらす』ことが目的ではありません。

手錠・腰縄を外し『遮蔽』を解除してから『開廷』しても何の不都合もないはずです」

藤本弁護士は「被告人は『無罪の推定』を受ける立場にあります。現在のような無神経な運用を少しでも改善するよう工夫するのが正しい『人権感覚』だと思います」と指摘していた。

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

藤本 尚道
藤本 尚道(ふじもと まさみち)弁護士 藤本尚道法律事務所
兵庫県弁護士会所属。神戸大学法学部卒業。弁護士会会務では主に広報畑を歩んできた。現職は、兵庫県弁護士会広報委員会委員、近畿弁護士会連合会広報委員会委員、兵庫県弁護士協同組合理事長など。

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