2歳児にタバコを吸わせたとして、父親(24)と交際相手の少女(16)が逮捕された事件で、名古屋簡易裁判所は12月7日、暴力行為等処罰法違反の罪で、父親に罰金10万円の略式命令を出した。少女は名古屋家庭裁判所で観護措置となり、少年鑑別所に移されたという。
二人が逮捕されたのは、若い男女が幼児にタバコを吸わせているような動画がフェイスブックで公開され、「児童虐待」という批判が沸き起こったのがきっかけだった。報道によると、二人は共同して、まだ2歳の長男の口に、火がついているタバコの吸い口を押し当てていたことが、捜査でわかったという。
動画をみると、子どもはタバコを何度も口に押し当てられて、明らかに嫌がっている。ただ、タバコの煙を肺に吸い込むところまでは至っていないようだ。もし仮に、小さな子どもにタバコを完全に吸わせたとしたら、どんな罪に問われる可能性があるのだろうか。榎本清弁護士に聞いた。
●2人で吸わせたら「暴力行為等処罰法違反」に
「今回は親権者の行為が問題となったので、まず、その点から考えてみましょう。親権者が、未成年者の喫煙を知りながら止めていない場合、未成年者喫煙防止法3条違反に問われる可能性があります。
次に、小さな子どもにタバコを吸わせるという行為についてです。これは、暴行罪(刑法第208条)に問われる可能性があります。暴行罪とは、人に暴行を加えたが、傷害には至らなかった場合です。
ここでの暴行とは『人の身体に向けられた不法な有形力の行使』を意味し、有形力とは『物理的な力』を意味します。
幼児が好んでタバコを吸うことはないでしょう。タバコを吸わせようとする時点で、体を押さえたり、顔の向きを変えたり、手を払ったり、口元にタバコを押し付けたりしますよね。
このような不法な物理的な力の行使があった場合は、暴行罪に問われる可能性があるのです。暴行罪では、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処するとされています」
2人がかりというのは、何か影響するだろうか。
「今回のケースのように、2人以上の者が一緒になって吸わせた場合は、『暴力行為等処罰に関する法律』1条の罪(集団的な暴行や脅迫など)に問われる可能性があります。行為が認定されれば、3年以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。
さらに、中毒症状をおこさせるなどの生理的な機能の障害を引き起こした場合は、人の身体を傷害したといえるので、傷害罪(刑法第204条)に問われ、15年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があります」
榎本弁護士はこのように話していた。何にせよ、2歳児にタバコなんて痛ましすぎる。